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結局解散になったのは21時を過ぎた頃だった。
「ありがとうな。」
「流石に疲れたね。」
「明日休みでいいから。マジで助かった。」
休みにしなくてもいいと断ろうと思ったけれど正直急な仕事で疲れていたからお言葉に甘えることにする。
会社に戻って社用車から自分の車に乗り換えると酒を飲まされていた貴臣を家まで送ってやる。
近くのパーキングに車を停めて部屋まで帰ったことを確認してからマンションを出て、パーキングまでの道をゆっくりと歩いて進んで行く。
しばらく歩いていると前の方から酔っ払っているのかふらふらと覚束無い足取りで歩いてくる人物がいることに気づいた。
避けようと端に寄るけれど、相手は俺に気づいていないのかなおもふらふらと道を行ったり来たりしている。
案の定肩がぶつかって衝撃に微かに呻くと、やっと気づいたのかその人物が慌てて謝ってきた。
「す、すみませんっ。」
「…大丈夫。」
酔っ払いに絡まれるのも面倒で冷たく返すと、その人は何故かじっと俺の顔を見つめてきた。
「……お客さん…?」
呟かれた言葉に彼の顔を見れば、昼間に会った彼だと気づく。
至近距離のせいで街灯に照らされた彼の顔が微かに赤くなっているのがよく分かる。
「お酒飲みすぎじゃないかい。」
心配になってつい咎めるように言うと、彼は苦笑いを返してくる。
「2杯しか飲んでないんですけど、今日は酔いが回るのが早くて。」
「…気をつけないとここら辺危ないから。」
大人の男なんだから大丈夫だとは思うけれど、気になる相手だからなのか過剰に心配してしまう。
「大丈夫っすよ。俺、そんなか弱くないんで。」
それなのに俺の心配を他所に彼は呑気にそう言ってヘラりと笑うから少しだけイタズラ心が芽生えてしまった。
「どうだろうね。」
気持ち悪がられたら潔く諦めようと頭の片隅で思いながら、ざっと彼の全身を見てがら空きの太ももを軽く撫でる。
それに彼が過剰にビクリと全身を飛び跳ねさせて赤い顔を更に真っ赤にさせながら俺の事を見てくるから俺の中の欲が微かに膨れたのが分かった。
そんな反応されるともっといじめたくなる。
「そんな反応じゃやっぱり危ないかもね。」
「…だ、大丈夫っすよ。」
大丈夫だと再度口にした彼に簡単に返事を返してから彼が向かっている方へと方向を変えた。
「向かってた方と逆じゃ…。」
「心配だから目的地まで付き添ってあげる。」
「…え、あ…ありがとうございます。」
こんなにふらふらしていたら危ないし目的の場所が歩いて行ける距離なら付き添ってあげようと思って隣を歩く。
顔が赤い割にはアルコールの匂いはあまりしなくて、彼が言う通りそんなに飲んではいないのかもしれない。
そうなるとかなり弱いってことになるけれど…。
「やけ酒?」
「え、いや、気分転換に少しだけバーに…。」
「…へー。ここら辺のバーって確かあそこしかないよね、IZUMI。」
「…よく分かりましたね。」
俺の質問に律儀に答えてくれる彼に内心でほくそ笑む。
IZUMIはゲイバーだからつまり彼も俺と同じってことだと分かってじわじわと喜びが湧き上がってくるのが感じられた。
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