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予定より15分程遅れで一周忌法要が始まり、母の座る席とひとつ空けた席に着く。
本来なら長女が座る場所だが、まだ着替えているためだ。
お経の間に、「一周忌」の意味などをお話された。
『一周忌というのは、年忌法要の中で最も重要な法要であり、故人が亡くなり悲しみ伏せていた家族が、悲しみから前を向いて生きていこうとする心の変化を持ち始める時期。
皆様はいかがですか。大切なご家族が亡くなり、葬儀、四十九日には悲しみの気持ちしか持てなかったけれど、一年が経ち少しずつ明るく前を向くことが出来ているのではないでしょうか。』
ご住職様は続けて、母の前に立ちこう問う。
「どうですか?」
母は神妙な面持ちで、
「生きている時も今もずっと感謝しています。」
と言った。
(ん?)
質問の答えとして、これはどうなんだ?
ご住職様も私と同じ(ん?)という表情で数秒の沈黙。
「どうですか?一年経って気持ちは少しずつ前を向いていますか?」
と、今度は私に問うご住職様。
私は「はい」とだけ答えた。
母は父が死んでから「感謝」という言葉をよく使う。
というか、それしか言わない。
果たして「感謝」の意味を本当に理解しているのかすら、私には謎だ。
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