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妄執
父が亡くなり、葬儀が終わるまでの間、母は何度も「お母さんのせいだよ。」と言った。
次女美波と分担し、仕事が休みの日は各種手続きに駆け回った。
四十九日、納骨が終わった頃からだったろうか。
母は「お父さんには感謝」と事あるごとに言い始め、父が死を選んだことには誰も触れようとしなくなっていた。
父が死を選んだ理由は、母のせいだと私は今でも思っている。
でも、母に直接「お父さんが死んだのはお母さんのせいだよ。」なんて言えない。
今。
母の本心はどうなのだろうか。
自分に言い聞かせるように「お父さんのお陰」「お父さんに感謝」と言うことで、自分の非を認めたくないのだろうか。
それとも、自分のしてきたことを悔いているのだろうか。
私は?
私はどうなのだろう。
親を憎むことは、出来ればしたくない。
でも、憎むことをやめるのは、自分を殺すことかもしれない。
そもそも、憎しみの心を持つ私は悪だろうか。
高齢の母をこの先憎み続けるのは、私自身苦しいことでもあるけれど、過去は全て水に流し親に感謝をすることは、恐らく私には無理だ。
どうすればいいのか。
未だに私はわからないでいる。
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