優等生

1/1
前へ
/197ページ
次へ

優等生

身体は小さく細かったが、たまに高熱を出すくらいで 比較的健康だったようだ。 念願の幼稚園に入園してからも、物静かで控えめ、先生や大人たちの教えには従順に従う。 「いい子」「優等生」 そんな風に言われることが多く、なかにはそれを面白くないと思う者もいて、鋏で髪を切られたり、意地悪をされて泣くことも少なくなかった。 しかし、この頃の私が母親を勘違いさせる原因になったのかもしれないと、今になって思ったりする。 造船業の父親と、専業主婦の母親。 市営のアパートに家族5人。 決して裕福とはいえない、寧ろ貧乏な家庭だったかもしれない。 姉たちとは歳が離れているからか、それとも覚えていないだけか、一緒に遊んだ記憶は殆どない。 母親は、姉たちの成績にはあまり関心がなかったのだろうか。 姉たちが成績について母親から叱られているところを、私は見た記憶がない。 幼稚園では、年長組になると知能テストというものがあった。 たくさんの問題を限られた時間で解いた記憶は未だ残っている。 知能指数といっても、所詮まだ五歳。 将来的にこの数値が本物なのか、まぐれなものなのかはわかるわけがない。 私自身、知能指数という言葉すら知らない年齢だ。 結果はIQ138。 クラスで一番だったらしい。 評価は「優良」だったが、先生には 「羽美ちゃんの優良は最優良だと思っていいです」と言われたと、母親は自慢をしていた。 嬉しそうに自慢話をする母親を見て、幼い私も嬉しかったのを覚えている。
/197ページ

最初のコメントを投稿しよう!

99人が本棚に入れています
本棚に追加