6/7
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/24ページ
悩み過ぎて涙ぐむ善に、ワタシは話を続ける。 「体をつくるのに必要だから食べないといけない。だからこそ『いただきます』と、命や命を育てた方々、調理した方々に感謝をしてから頂くのです」 「おいしいから食べるんじゃないんだ……」 「もちろん、食べるからには美味しく頂くのが一番ですよ」 ふわりふわり、毛先の短い善の頭を撫でる。 動物を殺すこと、なんてこの歳じゃまだピンと来ていないだろうに、それでも彼は考える。 『良い事』と『悪い事』の境界線を、こうして探って覚えていく為に。 「善は、優しい子ですね」 優しい子……感情移入しすぎて難しく考えてしまう子。 『死』というものを、子供の頃はちゃんと理解が出来ない。 だからこそアリの手足をちぎったり踏みつけたり出来てしまうし、それが残酷なことだというのは経験を積んで理解していくものだ。 善はまだ、そういうことを理解出来る歳ではない。 けれど善の名前が『善い』という意味を持つことを彼は知っている。 だからこそ、善行に拘ってしまうんだろうと推測する。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!