この無限ループからの卒業……出来ると思ったかそいつは幻だ

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『皆で1日10件』――この部分だけ聞けば、「あれ、そんなに辛くなさそうなミッションじゃね?」と思ってしまう人もいるだろう。 が、甘い。 ここは、日本でトップレベルに働く環境が悪いブラックな業界――学習塾なのだ。 そんなに甘い仕事を幹部様が与えてくる筈がないのである。 その為、甘そうな仕事がやってくると、最早先に警戒してしまうのが筆者君達従業員。 そして、我らは考え始める――この仕事の穴を。 楽しいミッションに裏はないのか、を。 と、 「はい、この仕事について質問がある方」 ちょうど、幹部様がそう切り出した。 すると、手を挙げる複数の講師達。 皆、ブラック企業の中で生き抜いてきた猛者達だ。 目付きが違う。 すると、当てられた講師達が早速質問を開始していく。 「先ず、1日10件と仰いますが、いつまでですか?」 「当分です。締め切りは設けていません」 「1日10件の書き込みは平日の就業時間中のみですか?」 「いえ、土日祝日や夏休み、年末年始の休み中等も休まずにやってください。土日は月曜日に、祝日や長期休暇は次に出勤した時に書き込み箇所を教えてください」 「報酬は出ますか?」 「出ません」 ほらね?こんな事だろうと思ったよ。 かくして、毎日良い評価を書き込み大作戦に巻き込まれてしまった講師達。 だが、このミッション――思った以上にハードだった。 先ず、毎日1日10件書き込みをしなくてはいけないのだが、水増し……サクラだとバレないように、全て文章を変えなくてはいけないのである。 しかも、1件ずつ交互に性別まで変えなくてはいけないのだ。 これ、地味に結構大変だった。 幾ら文章を考えるのが得意だといっても――元ネタが元ネタなのだ。 頑張って文章を捻り出しても、いつか限界が来てしまうものである。 実際、最後の方なんか褒める言葉がもう出てこなくて、理事長のハゲた頭を褒め称えてたもん。 「まるで地上に降臨した太陽の分身であるかのように眩しく神々しい頭皮」て。 何を書いてるんだか、全く。 ちなみに、この書き込みミッション――講師達に苦痛を与えただけではなく、なんと何名かの講師達の人間関係も破綻させてしまった。 このミッションが原因で起きたある幾つかの事件により、数名の講師達が塾を去ってしまったのである。 では、実際、何が起きたのか――?
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