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そんな、人材も仕事も墓場――いや、地獄と化してしまう印刷室。
しかし、ここで働くシルバーの皆々様もまた、屑に成り下がってしまった講師に負けず劣らずの屑っぷりを披露していた。
というのも――此方のシルバーの皆々様、仕事を全くしやがらないのだ。
印刷室に来て、行っているのはのんびりのほほんとしたティータイムなのである。
修羅場が続き、デスマーチが優雅に流れる印刷室で、シルバーの皆々様は何故かスローライフを送っちゃっているのだ。
しかし、この方々にもまた、こうなってしまった理由がある。
シルバーの皆々様が印刷室に、印刷をする社員として入社した頃――。
彼らはまだ、仕事場でティータイムをする程に腐ってはおらず、日々真面目に印刷業務をこなしていた。
しかし、ある時――複数の重い紙の束を持ち上げようとして、シルバーの方の1人が腰をいためてしまったのである。
まぁ、紙ってマジで結構重いからね!
すると――。
「大丈夫ですか?!」
と、駆け寄る印刷室勤務の講師達。
彼らは腰をやってしまったシルバーさんを心配すると、口々にこう告げた。
「力仕事は我々がやりますから!」
「ゆっくり休んでて下さっていいですよ」
「お仕事は、私達だけでどうにかします!任せてください!」
そんな彼らの好意に後押しされるように、腰が癒えるまでは動かなくて良いような――比較的簡単な業務を担当するシルバーさん。
講師達も、シルバーさんに心配や負担をかけまいと、バリバリと印刷の業務をこなしていく。
そんな光景を見ていて――ある日、シルバーさん達は気付いてしまった。
「これはあれじゃね?わしら、仕事をしなくても印刷の仕事は回るんじゃね?」
と。
その日から、講師達の様子を窺いつつ、ちょっとずつ仕事をサボり始めたシルバーさん達。
講師達も、シルバーさん達が行う仕事量が圧倒的に減っていっていたのは気付いていたが――それでも、「体調不良なのかな?」やら「まだ腰が完全に治っていないのかな?」と己の中で折り合いをつけ、見逃していた。
しかし、腰が完治しても――当人だけではなく周りの人達まで働かなくなってしまったシルバーさん達。
講師達が何回か彼らに注意をしてみたが、聞き入れて貰える様子は全くなかった。
挙げ句に、
「だって、君達が休んでていいって言ったんじゃないの」
いつも決まって、毎回この反論である。
こうなると、もう、会話にはならない。
講師達は黙って、シルバーさん達の分まで働くしかなくなるのだった。
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