この無限ループからの卒業……出来ると思ったかそいつは幻だ

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こうして、従業員は沢山いる筈なのに実際に稼働している人間はゴリゴリに減っていく印刷室。 しかし、ノルマは減らないし待ってはくれない。 なので、数少ない働く意思がある講師達は団結して仕事をしていくしかないのである。 だが、このシルバーさん達――実は上層部も薄々仕事をしていないのは感付いている。 では、何故いつも講師達を叱り飛ばす要領で注意しないのか。 それは――シルバーさん達の中には数名、上層部様達のお母様達がいたからだ。 上層部のお母様達が、この印刷室での仕事に応募をした動機は、 「息子ちゅわんの働いてる職場なら融通がきくし!息子ちゅわんに守って貰えるから安心!」 だ、そうである。 ちなみに、上層部のお母様達の給料は1ヶ月30万円だ。 で、その他のシルバーさん達の給料は25万円。 一般の講師達とはえらい違いである。 働かず、ただティータイムをしているだけで、1ヶ月に30万円がぽーんと振り込まれてくるのだ。 ティータイムをしながら、上層部のお母様は、ある日こんなことを言っていた。 「今までにない楽な仕事だわぁ~」 そりゃそうだ。 仕事っていうけど、そもそも働いてすらいないんだから。 だが、そんなシルバーの皆様が唯一やる気をみせる仕事がある。 それが、出来上がったテキストの各校舎への配送だ。 え?郵送? お金がかかるから、社内製作のテキストは郵送してないよ! そんなこと、どケチな上層部様が許す訳がない。 なので、印刷室には各校舎用印刷物置き場があったりしちゃうのだ。 で、基本的に――各校舎の講師達は1週間に1回は印刷室に立ち寄り、自校舎の印刷物置き場を確認していくのである。 その為、テキストが出来上がると、印刷室勤務の講師達は、各校舎の印刷物置き場にそれを置く訳だが。 中には、熊谷や聖蹟桜ヶ丘等本部や本社から離れていて印刷物を取りに来るのが難しかったり、講師達の予定が詰まっていて印刷物を取りに来られない校舎もある。 そんな時は印刷室勤務の誰かがお届けに行かなくてはいけないのだが――この仕事、めっちゃシルバーの皆様がやりたがるのだ。 何故なら――。 「じゃぁ、私今日は高幡不動まで配送に行って、その後直帰しま~す」 そう、直帰が出来るから。 遠方に、午後遅い時間から配送に向かう場合、帰って来る時間が遅くなりそうな時は直帰が許されているのである。 この、直帰が目当てでシルバーさん達は配送を行っているのだ。
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