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前回のあらすじ。
島ちゃんが托卵されてたことが発覚したよ!
確かに島ちゃんは苦手だったし、何ならバルスと思ったことはあったが、ちょっとここまで不幸になれとは思っていなかったでござる。
いやさ?
限度ってものがあるじゃん?
幾ら、神様はその人が乗り越えられない試練は与えないって言っても、これは流石にあかんやろ。
乗り越える前に心が粉砕骨折してしまっているよ。
島ちゃんの巨体を引きずるようにしながら、何とか椅子を並べた上に寝かせる筆者君達。
確かにこやつは嫌いだが、あのままにしておくのには忍びなかったのだ。
と、意識を取り戻したのか、島ちゃんが虚ろにこう呟き始めた。
「……托卵……僕の子供じゃなかった……僕の子供じゃなかったなんて……托卵……」
焦点の定まらない瞳で、ずっとそう呟き続ける島ちゃん。
端から見たら正直ホラーなのだろうが、事情を知っている講師からすれば、その姿はまさに憐れなことこの上なかった。
「……僕のこれまでの人生は、一体何だったんだ……」
涙を拭うことなく、天井を見つめたまま、島ちゃんはそう嘆く。
けれど、筆者君をはじめその場にいる講師達は誰もその問いに答えることは出来なかった。
その場を支配する、非常に重い沈黙。
すると、落涙する島ちゃんを嘲笑を浮かべながら見下ろしていたシマザーがこう告げた。
「ね?分かったでしょう?不倫は仕方のないことなのよ。人間は不倫をする生き物なの!」
だが、シマザーのその台詞に島ちゃんはゆっくりと首を振る。
「……いいや!僕は信じない!断じて信じないぞ!今までの話は、全て貴女が勝手に言ってるだけじゃないか!僕はそんな物信用しない!僕が信じるのは妻の言葉だけだ!」
シマザーに毅然とそう告げる島ちゃん。
シマザーは、そんな息子の様子に舌打ちをする。
どうやら、息子が元気を取り戻したのが面白くないらしい。
と、シマザーの目の前でやおらスマホを取り出す島ちゃん。
そうして彼は、シマザーや我々の目の前で自らの嫁に電話をかけ始めた。
「僕は妻の口から直に聞いた言葉のみを信じる!」
夫婦の愛を信じ、強くそう語る島ちゃんの瞳は期待と希望の瞳に光り、輝いている。
(そうだ……!絶望的な出来事ばかりで、いつの間にか忘れてしまっていたけれど……世の中、悪いことばかりじゃない!愛が勝つことだってあるんだ!)
嫌いな奴ではあるが、希望に燃える島ちゃんのその背中に、いつの間にか自分も希望を見出だしていた筆者君。
(どうか、愛よ勝ってくれ――!)
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