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平安貴族の日常は、思いのほか忙しい。
宮中へ参内し、与えられたお勤めに励み、上役の家で宴が開かれれば、ご機嫌伺いに赴く。
さる大臣の姫君が、女御に上ると耳にすれば、出世のために、付け届けという名の祝いの品を持参して、邪険にされても、晴れやかな笑顔を手向け続け、都の外れに美女がいると噂が立てば、その姿を確かめに行く。
加えて、屋敷で行われる、節目毎の節句の行事に勤しんで、見知らぬ遠縁とやらの来訪には施しを与え、義父の愚痴にも相づちを打ち、仕える女房達に、唐菓子の一つでも分け与え、都の流行りを聞き取って、側付の童子達を手なずけ、北の方──妻、の機嫌を探らせる。
夜となれば、目をつけた姫君と、情を交わすという大仕事を果たし通す──。
もちろん、この屋敷の主、守近も、例外なく、貴族の日常とやらをこなしていた。
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