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「それにしても連歌とは。これはまた災難だ。私も、あれは苦手なのだよ」
「守近様にも、苦手なものがあるのですか?!」
長良の沈んだ顔がぱっと輝いた。
「世間はどう言おうと、私もただの人だよ?苦手なものもある」
特に、恋歌は、さっぱりです。と、言えれば良いのだが、どう転んでも、口外できない。もしも、世間に伝わってしまえば、築いてきた地位すら危うくなる。
少将守近は、童子に頼りきっている。などと、失笑されて、宮中では、つまはじきにされるだろう。
一度出世の道を外れると、あとは、落ちぶれるのを待つしかない。
(ああ、それだけは!)
「よかった!守近様が、苦手なものを、私がこなせるはずがありませんよね!」
我が身の滅亡に震え上がる守近の側で、泣きべそをかいていた長良が、笑顔を見せていた。
げんきんなものだ、やはり、長良は、まだまだ子供。これで一安心と言いたいが、守近は、事の騒動の元、連歌などを送ってきた姫の事が気にかかった。
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