某家守近のこと

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連歌とは、その名の通り、連なる歌の事。 一人が(かみ)の句の部分を詠み、次に、託された者が(しも)の句の部分を詠んで、歌を創りあげる。 下の句を与えられた者は、上の句を詠んだ者の意図を汲み取り、雅やかにまとめあげるか、はたまた、狙いをあえて外して、意外性を楽しむか。 細かな、決まり事は、多々あるが、気心知れた者が、じゃれあうにはうってつけの言葉遊びである。 ところが、長良の言うには、初めて見る、送り主だとか。 初回の歌が連歌とは、かなり押の強い姫君なのだろう。 普通、女人から意中の男へ文を送ることはない。女房を使って、男の方から送らせる様、仕向けるものだ。 もちろん、情を交わせば、恋寂しいやらと、屋敷へ通わせようとして、女人からも文を出す。 だが、この姫は、駆け引きなどお構い無しで、こちらの実力を試そうとしているかの大胆さすら感じさせた。 関わると、やっかいそうだと守近は思う。 「長良や。ほおっておきなさい。そのうち、焦れて、自ら下の句を送ってくるよ」
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