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「守近様が、そうおっしゃるならば……」
長良の口は重い。何か納得していないようだ。
「では、下の句が届いたら、どうすれば良いのでしょう?連歌の下の句には、どう続けるべきなのでしょう……」
おやおやまあまあ。
下の句が出来上がった歌を、まだ、続けようとしている。それでは永遠に詠い続けることになる。
呆れる守近の視線など気にならないようで、長良は、真剣に考え込んでいる。
「あっ、お方様に、お尋ねしたら……。お方様も、歌がお上手だから……」
守近は、ギョッとする。
屋敷の者にばれた時、支障が無いよう、徳子の為ということにしているのに、当の徳子に喋ってどうする。
「長良!忘れたかい?これは、私とお前だけの秘密。徳子を傷つけない為にと、頼んだことだったろう?」
「ああー!そうでしたっ!も、申し訳ございませんっっ!」
しくじったとばかりに、長良は、自分の口を両手で押さえる。
「どうやら疲れが溜まっているようだな。少し、気分を変えた方が良い」
文机に置かれてある塗り箱から、守近は鋏を取り出した。
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