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パチン、パチンと、小刻みに鋼の音が鳴り響く。
暫く後、「よぉし、こんなところか」と、守近の嬉しそうな声の前には、長良が散らかした紙が、細かく刻まれ、小山を作っていた。
「守近様!貴重な紙を刻んで!勿体無いのうございます」
長良が、非難の声を挙げる。
書き損じた和紙は、試し書きにしたり、長良なりに工夫を凝らして、幾度も使っていたのに。それを、あっさり、塵にしてしまうとは……。
「ではでは、これでも、長良は、勿体無いと言うのかい?」
それっと、守近のかけ声と共に、長良に向かって、紙が舞い飛んで来る。
「う、うわっ!」
避ける暇もなく、長良は、まともに、紙切れを受けた。
「そうれ、長良、紙吹雪だ!」
顔に、へばりつく、紙切れを払う長良のことなどお構いなしで、守近は、それそれと、投げつける。
「うわぁ!もお!」
「ははは、悔しいか?ならば、お前も、投げ返してご覧。さあ、雪合戦だ!」
長良は、足元に散らばる紙切れをすくい取ると、守近へ、投げつけた。
「おおっとっ!」
守近も、頭から紙切れを被っている。
へへっと、笑い、何処か得意そうな長良に、守近も負けていない。
「それ!」「よしっ!」「どうだ!」「うわっ!」
愉しげな声が響く──。
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