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潜降12m サンゴのかけら③
空港からタクシーに乗ると、運転手さんに那覇の比較的安いビジネスホテルを紹介してもらった。
「お姉さん、東京から来たの? 」
「はい」
「俺も東京にいったことあるよ~。でもすぐ戻ってきたよ。あっちの冬は寒いでしょ」
「そうですね。東京の冬は乾いた風が冷たくて痛いですからね」
「そう、そう」
・・・・・・
・・
別に考えがあったわけじゃない。
砂川さんに会おうって思ったわけじゃない。
ただ、砂川さんが話してくれた沖縄を見ておきたかった。
それだけだった。
何も終わったわけじゃない。
だって何も始まっていなかったんだから。
でも何も残らないのが嫌だった。
だから、せめて沖縄の海をこの眼で見ておきたい。
そんな気持ちで沖縄に来てしまったのだ。
・・
・・・・・
朝、9:00にチェックアウトをして海辺に向かって歩いた。
「青いなぁ.. 」
海浜公園を散歩していると、片目に黒模様が入った白い猫が後ろをついてくる。
しゃがんで、『おはよう』と声をかけると、喉をゴロゴロならして体を摺り寄せる。
「ごめんね、何もないんだ」
猫は私の顔をその丸い目でみると、スッと私とは反対の方向へ歩いていく。
国際通りを歩き、そのままバスに乗り北谷に向かってみた。
話に聞いていた。
『北谷って何て読むと思う? 』
メールの一文を思い出す。
「そう.. ちゃたんだ」
北谷に着きビーチに歩いていくと大きな建て看板を見つけた。
『北谷フェスティバル—13:00開催』
・・・・・・
・・
イオンで帽子と水を買い、ビーチに降りる階段に腰かける。
離れた場所でもフェスティバルの音が聞こえる。
ここから見る海は、ソーダ色に透明で、私の心もその中に溶けてしまうのではないかと思うほどだった。
「綺麗.. 海の中もきっと綺麗なんだろうな。海の中、見られたらいいのに.. 」
(この海の中を見たら砂川さんの心の一部でも理解できるのかな? )
そんな思いが一瞬よぎったけど、すぐに自分で削除した。
しばらく、そこで過ごすと那覇空港へ向かった。
飛行機の待ち時間、最後に1通だけメールを送った。
『砂川さん、メール見て正直、悲しかった。
でも、今は仕方がないよねって理解しました。
だからもうメールはしないし、LINEもブロックします。
だから、
きっと明日を良い日にしていきましょう。
さようなら、ありがとう 柿沢 桃
追伸、めずらしい景色がいま見えています。
半分凄い雲がピカピカ光っていて、もう半分、日差しに混じって虹が2つかかっています。
こんなの初めて見ました。』
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そのメールを受け取った砂川の頭上に、大きな虹が2つかかっていた。
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