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ミラージュ
水の都 ウンディア。
街の至るところを水が走りそこを船が移動する。人の手でオールを漕いで人も荷物も運ばれる。運ばれた荷物の麻袋を狙うのは白いカラス。それを手で追い払うのもこの町ではよくある光景だ。
レンガなどの石で作られた街並み。馬車や大きな荷物を背負って商売をする人達。建物の中からは香ばしく焼かれたチキンの匂いが待ちゆく人の足を止める。
そんな街の一角。
薄赤煉瓦の建物に同じ四角い窓が連なる。小さな部屋から出てきたのは母親と父親とその娘。
割腹の良い黒いひげをはやした父親は母親と娘に告げる。
「…それじゃ、父さんは仕入れに行くから、二人ともよろしく頼むぞ。」
「はーい。」
娘の茶色の髪を軽く撫でて父親は街に繰り出す。
「さぁ《エメラ》。仕事に行くわよ。」
「はーい。」
母親に呼ばれたエメラ。彼女は両手を広げて、首から下げたバッドに沢山の果物入れて街へ繰り出す。
14歳の彼女にはバッドは大きくよろけてしまいそうだが、華奢な腕を目一杯伸ばしてそれを抱えて賢明に街へ繰り出す。
これも彼女の日常だ。
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