出張

5/7
前へ
/68ページ
次へ
 冷たいのと熱いのとの落差が激しくて、くらくらする。 「手足の先まで温めてやる」  そう宣言すると、進藤は首筋に唇を寄せた。  ぺろっと舐められて、鼻にかかった息を漏らしてしまう。 「……んっ」  それと同時に、さわさわと脚を撫で下ろされて、下半身がぞくっとした。 「ん? そんな色っぽい顔して、まさか感じてるのか?」 「そんなわけないじゃない!」 「じゃあ、温め続けていいよな?」 「こ、こんなことする必要ある?」 「これが一番手っ取り早い。それに、このままだとお前、温まらないだろ」  確かに、芯から凍りついたような身体はストーブの火でも溶ける気配はないけれど、さっき進藤に含まれた指はすっかり温まっている。  おもしろくないけど、しょうがない。  私はうなずいて、「好きにすれば」とつぶやいた。 「お前な〜、ここでそのセリフを吐くか!?」  突然がっくり崩れ落ちた進藤が私の胸元に顔を埋めた。  さっきから進藤の行動の落差も激しい。  と、急に顔をあげた彼と目が合う。 「まさか、お前、処女か?」 「なっ、いきなりなに言うの? 違うに決まってるでしょ!」    したことぐらいあるわよ! 一回は!  その最低の経験を思い出して、嫌な気分になる。  ──おい、マジで、お前、あの真面目ちゃんを落としたのか?  ──ちょろかったぜ? ちょっと甘くささやいただけで、ほいほい家についてきて。  ──で、どうするんだ?  ──飽きるまで相手してやるか……って、うわっ、冗談……グェッ!  ムカつく同級生の顔をグーで殴って、金輪際、恋愛はしないって決めた。私は仕事に生きるのよ!  受験で精神不安定になっていたとはいえ、私としたことがバカなことをしたわ……。 「思い出すな!」  最悪な思い出を回想していた私の顎を掴んで、進藤は私に口づけた。 「んっ、んんっ〜」  口に吸いつかれ、熱い舌が入ってくる。   (な、なにするのよっ!)  じたばたするけど、口の中を探られて、舌を擦り合わされるとぽわっと身体が熱くなってくる。  そうか、なにかで読んだことがある。身体を温めるには身体を重ね合わせるのが一番いいって。  もしかして、進藤はそれをしようとしてるの?  それが正解だったようで、彼は私の胸まで揉み始めた。  こねくり回され、尖ったところを摘まれ、身体が熱くなってくる。  好きにすればって言っちゃったしな。  進藤も寒いのかもしれない。こんな冷えた私と毛布に包まっても温まらないし。 (しょうがない。女に二言はないわ!)  しぶしぶ私は進藤に身を任せた。
/68ページ

最初のコメントを投稿しよう!

504人が本棚に入れています
本棚に追加