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「それにしても、少しは片付けたほうがいいんじゃないですか? このお部屋、散らかってはいませんけど、ちょっと物が多すぎますよ」
黒は呆れて言った。
「それがですね、すべては演劇部のせいなんですよ」
「演劇部?」
「ええ。僕、演劇部の連中と仲がいいんです。でもあの連中、最近、僕の好意に付け込んで、この部室を物置として使い始めるようになったんですよ。最初は『段ボールを二つか三つ置かせてほしい』ってだけのお願いだったのに、今ではご覧の有様です。白アリのような連中ですよ、演劇部は」
「はあ。それはお気の毒に」
「僕自身はミニマリストです。自宅の部屋だって綺麗なもんです。見ます? 僕の部屋の写真」
返事も聞かずに、灰原はスマホを操作し始めた。
黒は慌てて「いえいえ、結構です。灰原先輩が本当は綺麗好きなのはよく分かりましたから……」となだめた。
灰原光。ほんとマイペースな男だ……。
黒は呆れて、そして少しだけ感心した。
「そうですか。では、改めまして」
灰原はスマホをポケットに仕舞うと、わざとらしく背筋を伸ばした。
「白から話は聞いています。映画部へようこそ、黒木さん」
「『青陽くん事件』が解決するまでの期間限定で、協力するだけです」
「もちろん、それで結構ですよ」
「あと、敬語で話すのはやめてください。あたし、後輩なんですから」
「りょ、了解でっす」
「まだ敬語ですよ」
「ご、ごめんだぜ」
黒は椅子に腰を下ろした。
灰原は部屋の隅から新しく椅子を持ってくると、テーブル越しに座るのかと思いきや、黒の隣に座った。近い。シャンプーの香りがする。この男、朝シャン派か。
「さっそくだけど、本題に入らせてもらいます……入らせてもらうぜ」
灰原はマックブックの位置をずらして、黒が見やすいようにしてくれた。
「白からだいたいの話は聞いた。屋上のこととか、青陽くんのこととか。うん」
マックブックの画面には、テキストエディットが立ち上がっている。そこには、昨日黒が白に話した内容が箇条書きで記してある。
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