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「黒木さんは」 「呼び捨てで結構です」 「黒木、でいいの?」 「黒でいいですよ」 「黒」 「はい」 「黒は、青陽くんが屋上から本当に飛び降りたと思ってる?」 「うーん……。100%飛び降りていないとは言い切れない、って感じです」 「そっか。僕はね、今朝、ちょっとばかし調査したんだ」 「調査?」 「ひとまず、本校舎裏を見てみたのさ。水たまりに混じった赤い物、それを確かめようと思った。でも、さすがにもう消えていた」 「そうですか……」 「念のための確認だけど、それは、本当にごく僅かの量だったんだよね? 水たまりに混じった赤い物」 「はい。ごく僅かです。視力2・0のあたしじゃなきゃ、見逃しちゃいますね」 「仮に、青陽くんが本当に飛び降りたとしよう。七階建ての本校舎の屋上から落下すれば、かなりの量の血が流れるはずだ。でも、黒が見た血のようなものは、ごく僅かな量だった。この矛盾に、黒ならどんな答えを出す?」 「雨のせい、と答えますね。昨日はめっちゃ激しいにわか雨が降りました。血は雨で洗い流された。でも完全には洗い流されず、ちょっとだけ残った……てな感じです」 「そのとおり。誰でも分かるよね」  言わせておいて誰でも分かるとは失礼な。 「でもね、それはおかしいんだ。だって、昨日のにわか雨は、放課後すぐにやんだんだからね」  黒は合点がいかなかった。  雨は放課後すぐにやんだ。それは知っている。しかし、それがなんだと言うのだろう? 「白から聞いた話によると、黒が青陽くんから自殺予告を受信したのは、15時35分だったらしいね」 「はい。LINEのトーク画面には『15:35』って受信時刻がちゃんと表示されているわけですから、それは間違いありません」 「うん。そして、そのメッセージが着信するより前に、雨はやんだ。そうだったよね?」  そうだ。昨日、下校のために昇降口を出て、野良猫を見つけて撮影した。その直後に、雨は突然やんだのだ。  それからまた少し猫と遊んだ後、帰ろうと正門の前まで歩いたタイミングで、青陽からの自殺予告を受信した。 「はい。LINEが着信するより前に、雨はやみました」 「ちなみに、雨がやんだ正確な時間ってのは、さすがに分からないよね?」 「そうですね。雨がやんだ時間を記録したりはしてないので……。あ、いえ、もしかしたら分かるかもしれません。正確な時間が」
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