一、雪の中の鶴

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 筆記試験の手応えは上々。  面接でも用意してきた答えを上手いこと返せたと思う。  物心ついたときから自分の要領の良さは自負している。    中学生生活の三年間、運動も勉強も少しの努力で人並み以上にこなせた。  男子たちが可愛いと騒ぐ女子から告白されて付き合ったりもしたし、それを妬まれるような鼻につくキャラでも無いらしい俺は、友人関係に悩まされることもなかった。  カーストがはっきり分かれてしまう中学校という狭いコミュニティで、完全に第一軍にいたと思う。   加えて、サッカー部の部長を任命され、全国大会2位という華々しい成績も残した。  おかげでこの翔鷹高校にスポーツ推薦されたのだ。  私立翔鷹(しょうよう)学園高等学校。  体育科目に特化している翔鷹高校は、普通科とスポーツ科に別れていて、スポーツ科からは現在プロになっている卒業生も少なからず存在する。  スポーツ科を受けるほとんどの生徒が、推薦入学だと聞く。  ただし推薦だからといって筆記試験を免除されることはない。  学力にも重きを置いている翔陽高校スポーツ科は、まさに文武両道の生徒しか在籍していない。狭き門だった。
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