二、合格

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 「姉貴、第一志望の翔鷹高校、受かったよ」    ここはいつ来ても、同じニオイがする。洗いたてのシーツと消毒液が混ざったような、怖いほどに清潔なニオイ。  四角い黒背景のモニターからピピッピピッと一定のリズムで電子音が聞こえる。  緑の波形がしっかりと表示されるのを見て、今日もほっと息をつく。 「翔鷹はブレザーなんだけど、俺、似合うかな」  小さなテレビの脇の花瓶には、枯れかけた花が飾られている。  母か、友人が飾っていったものだろうか。 「高校のすぐ近くで花屋見つけてさ」  萎れた花と、買ったばかりの赤いガーベラを取り替えながら言葉を絶やさずにつむぐ。 「ネクタイちゃんと結べっかな。親父に教えてもらわねえと」  何を話しても、ベッドで眠る姉からの返事はない。  自分の声だけが木霊する病室に、最初こそ寂しさと照れがあったものの、それも今やすっかり慣れた。 「じゃあ、またな」  姉の病室から出ると、担当の医師が向こうからやってくる。 「おや、弟くん。今日も来てたんだね」 「こんにちは。姉がいつもお世話になってます」 「少し見ない間にまた一段と男前になったね、背も伸びたんじゃ無いか?」 「そうっすね、背は伸びたかもしれないです」  白髪の医師の言葉に微笑みと曖昧な言葉を返して、下りのエレベーターに乗り込んだ。  
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