何か資格はお持ちですか?

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「おい!記憶はちゃんとしてるんだろうな!?あんな大金もらっておいて、万が一のことがあったら…」 「大丈夫だよ!このラボの主任である俺が作ったんだぞ?ご丁寧にゼロからさ。赤ん坊のときの記憶とか普通に過ごしてたら忘れるのに!記憶なんて思い込みでいくらでも変わる曖昧なもんなんだから。もともと(から)なんだし、あとは脳が修正してくれるよ」 白衣を来た男性が話している。二人がいる部屋には酸素カプセルのような機械がズラリと並べられていた。中に入っているのは植物状態の子どもたちだ。 ある年、生まれた新生児が次々に植物状態になってしまう奇病が流行したため、国が保障し科学の英知を結集して高性能な医療機器を開発した。そして目覚めるのを待っている。 一人の少年が別の個室のベッドの上で、ゆっくりと目を開けた。 「拓也!拓也!分かる!?」 母親は少年の手を握り懸命に呼びかけている。 「か、あ…さん…?」 「ああ…良かった…あなた…ずっと眠ったままだったのよ!」 彼から反応を受けた彼女は手を震わせ涙を流した。 「…奇跡だ…」 反対側にいる父親も目を潤ませた。 「武藤さん本当に良かったですね…!息子さん、初めての生還者ですよ…!もう心配いりません!」 医師の瞳も濡れている。 ああ…僕、本当は人間だったんだ。良かった… 拓也は微かに微笑み、眠りに落ちた。
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