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「そういえば、……亜優(あゆ)ちゃんも確か和久井と同じ北陽受けてたよね」
さりげなく訊いてみると、和久井の目がふっと優しくなった。
「そ。発表は明後日だけど、たぶん受かるよ。入試のあと自己採点してみたら余裕で合格ラインだったって言ってたし。俺らと離れたくないからって相当頑張ってたからなあ、あいつ」
「そっか。じゃあまた三人一緒だね」
「そういうこと。っつーか、もはや俺の中にあいつらと一緒じゃないイメージが湧かないんだわ。三人でいるのが当たり前になっちゃってて」
「……」
わたしは黙って和久井の顔を見つめた。
二ノ宮くんと亜優ちゃんの話をする時、和久井はよくこういう表情をする。
嬉しそうで、誇らしげで、とても幸せそうな顔。
うらやましくて、少しだけ妬ましい。
今までも、そしてこれからも、和久井と一緒にいることに理由を必要としない二人のことが。
「和久井」
「ん?」
風が吹き込み、カーテンが大きく膨らむ。
ほんの数秒間、和久井と見つめ合った。
彼の瞳に自分の姿を見つけ、胸が締め付けられる。
「――大事にしなきゃだめだよ、二人のこと。高校に行っても仲よくね」
私は和久井の手からサインペンをすいっと引き抜き、机の上を片付け始めた。
「そろそろ行こう。この後はみんなで遊ぶんでしょ?」
「ああ、俺はサッカー部の奴らとカラオケ。委員長は?」
「美帆ちゃんたちにパンケーキ食べに行こうって誘われてるけど、たぶん行かない」
「なんで」
「私がいたら盛り上がらないと思うし」
「そんなことないだろ」
「あるよ。いいの。委員長っていうのはそういう立ち位置なの」
立ち上がり、和久井の手から色紙を取り上げる。
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