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創一が同じ動作を幾度と繰り返すうちに、まばらにいた生徒たちは本降りになってゆく雨と共に姿を消した。等間隔で置かれた六人掛けの机が、とてつもなく膨大して見える。
最終下校時刻の予鈴が鳴り、創一はいよいよ諦めて席を立った。意味もなく図書館へこもったのは、平木のことがあったためだと嫌でも頭を過る。一旦は帰宅しようとしたものの足が進まず、停留所でバスを待たずに学校へ引き返した。
平木は世間でいう真っ直ぐな道を行く男だろう。創一はそう思いながら頭を掻いた。抱き締めたのも、自分が意図するものとは違う。自覚すればするほど無性に苛立ち、反対に躰は相手を求めようとする。
「みっともねえな……」
渡り廊下の出入口に立ち、降り頻る雨を横目に眺めながら創一は呟いた。青硝子のような雨天が、別棟から覗く西側を染めている。
右の本校舎に足を向けようとしたとき、言い争うような声が聞こえてきた。創一は咄嗟に後退り身を隠す。
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