風は気ままに

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 創一は部室にいながら、全く関係のないトラベル誌に目を通していた。勧誘自体は強引ではあったものの、部活動を強制されるわけではない。同じく被害者の椿田遠矢も、参考書と睨み合いを続けている。  初夏を迎えた空は瑞々しく、純白の雲を携えて柔らかな陽ざしを落とす。清々しい風が三階の窓辺から入り込み、銘々取り組んでいる者たちへ吹きつけた。  それを合図に、顧問の平木が大きく背伸びをする。小テストの採点に飽きたらしく、パイプ椅子にのけ反って、視線を野外へ向けている。 「ああ……田舎の風景だな」  平木が何とはなしに呟く。水を張った田んぼの中をトラクターが行き、田植えの準備をする姿がいくつかある。  和凰高校は田園に囲まれた場所に立地しており、校舎の北側から望める風景は見渡す限り田畑だけである。これといって見映えするものもなく、地方有数の進学校という名目がなければ、この古びた建物も景色に霞む。ゾンビ映画の撮影場所に使うのが丁度良いと思うほどだ。
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