温めの風

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温めの風

 梅雨入りを知らせる、じめりとした湿気が教室に漂う。その一方で、ぐずついた天気は一時回復し、窓側の席には眠気を誘うような日が差している。泡立った雲から溢れる陽光は心地よくもあり、憂鬱な感情を躰に纏わせもする。  創一は昼時の気怠い教室を抜け、目的もなしに廊下を行った。このところ担任とは朝のホームルームで会うきりで、どちらが避けているのか擦れ違うこともない。それは遠矢にも言えることで、他のクラスを覗いても、それらしい姿を捉えることはできず、ノートを返す機会も完全に失われていた。  廊下を突き進むと、食堂と化した玄関前のロビーに、昼食を楽しむ生徒や教職員の姿がちらほらとあった。その中に平木も混じっており、普段は横目で通り過ぎるだけなのを創一は近寄って声を掛けた。 「先生、一緒にいいですか」  平木は食べ物を頬張ったまま、大きく頷いて対面の席へ手を差し伸べた。彼はコンビニ弁当のほか、ナポリタン、チョコレート菓子と炭酸飲料をランダムに口へ運んでいる。食べ合わせや食べ順の無茶苦茶な様が本人の気質をそのまま表していた。 「なあ、これ……俺……だから」  腰を下ろした創一に、さっそく平木が身を乗り出してくる。だが今一聞き取れなかったため、創一は適当に相槌を打って話を合わせた。
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