温めの風

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 不思議そうに紙包みを手に取った遠矢は、包装を解いてすぐ顔つきが変わった。現れた墨色の眼鏡ケースをさらに開き、表情を一段と険しくする。 「……気を悪くしたなら、詫びるよ」 「創一が謝ることじゃないさ」  遠矢はわざとらしくケースの中を創一に見せた。以前、遠矢がしていた眼鏡と型が似ている。そういえば、今の彼は眼鏡をしていない。極度の近視だとは思うが、周りは見えているようなのでコンタクトだと思われた。 「……あのさ、学校に来ていないみたいだから心配してたんだ」  創一は、ずっと吐き出したかった言葉を口にした。もしかしたら、あの放課後の件が関係しているのかもしれないという懸念があった。遠矢は目を伏せて口をつぐんでいたが、短く息をついた後に唇を動かした。 「眼鏡が壊れてさ、替えがないから困ってたんだ」 「……ああ、それで」 「だから、風邪ひいちゃって。その日は運悪くどしゃ降りだったから、帰ってきたときにはずぶ濡れだったんだ。晴れていたら、感覚で場所が判るんだけど」  遠矢は気怠そうに椅子にもたれた。熱はもう下がったのだと付け加えた後で、瞬きを繰り返して目頭を押さえる。どうもコンタクトが合わないらしい。 「ごめん、ちょっとトイレ」
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