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風向きの変化
中間試験が来週に迫るにつれ、諸処の部活動も控えめとなる。無論、三階に部室を構える新聞部も例外ではない。創一が立て付けの悪い扉を開けると、いつものメンバーがすでに定一についていた。
会議テーブルには写真が散乱する代わりに教科書の類いが山積みされ、部室内は勉強会となっている。他人のプライベートを平気で記事にするような活動をしている彼らだが、学年順位は一桁台の優秀者揃いで教師も目を瞑らざるを得ない。
顧問の平木は試験問題の作成に忙しいらしく、部室に姿を現さない日が続いている。顔を合わせるとすれば、ほぼ生物学の授業がある時に限られる。入学早々実施された試験で九番目だった創一は、部員に遅れをとらないよう、誰よりも神経を尖らせていなければならない立場にある。
だが、授業に集中しようとすればするほど意識は曖昧に途切れ、壇上の躰つきばかりを追っていた。当然、無頓着な平木が知る由もない。
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