2人が本棚に入れています
本棚に追加
そういうのは気付かない内になっているもの。
「太一、お前はあの人を見張ってろ。話しかけるなよ?あくまでも監視だからな。変な奴が居たらすぐに俺に電話しろ。いいな?」
「え………」
そう言い残し、純はその場を去って行った。
…………ぇぇぇええ!!嘘でしょ?何で僕が??何?何をすればいいの?
訳も分からずその場に立ち尽くす太一。だが言われた通り、少し離れた所から一定の距離を保ってヒーラーさんを見張った。
…………こんなの僕、ガチなストーカーじゃん!!
ごめんなさい……ごめんなさい……その言葉を心の内で唱えるのはもうこれで何度目だろうか。悪気はないとはいえ、ヒーラーさんに申し訳なく………いや、産んで育ててくれた母に申し訳なくて仕方が無い。まさか27年目にしてこんな形で女性を追い回しているとは夢にも思っていないだろう………。
…………今思えば僕は、親不孝な息子だったなぁ。中学の時は虐めに耐え切れずそのまま不登校に………高校になって心機一転!と思いながらも結局人と対等に話すのが怖くて根暗な高校生活を送った。フリーターのまま正規雇用にもならず、その月々を食いつなぐだけ。
「…………あ、十円。」
そう悪い事ばかりでもない……と、道に落ちている小銭を拾い、ポケットにしまった。角を曲がったヒーラーさんに近付き過ぎないよう、角の手前で少しの間待っていると後ろからトスっと誰かから肩をぶつけられた。
「あ、すみません………」
咄嗟に謝った太一がいつもの癖で地面を見つめる。他人と顔を合わせるのはこの歳になってもまだ怖いのだ。太一よりも背が高く、がっしりとした体格なのはぶつかった時に何となく分かった。その男性は何も言わずに小走りで角を曲がってしまった。
…………ぶつかったんなら謝れよ…………非常識な人だなぁ。
ムスっとしながらその後に続いて角を曲がると、そこに居るはずのヒーラーさんも、たった今曲がったばかりのあの男性も消えていた………。
…………え?
最初のコメントを投稿しよう!