おめでとうを、君に

2/7
前へ
/7ページ
次へ
 そういう人だったのだ、アイツは。教室でのアイツはことあるごとに溜息を吐いては背伸びをしていた。ペンを握っている時間よりも背伸びをして教室の椅子を上手く斜め後ろに保ちながらギィギィと音を鳴らして窓の外を眺めている時間の方がきっと長かった。そこまで背伸びをした受験じゃないから別に勉強なんてしなくてもいいのだと、必死に数学を勉強をする私の横でアイツはいつだって余裕そうだった。そんな無慈悲なアイツでも、この高校に同じ中学から進学したのはアイツと私の2人だけだから、入学式の前に一度会っておこうと、そうあまり私らしくないことを考えた。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加