おめでとうを、君に

6/7
前へ
/7ページ
次へ
 「ねえ」  「同じクラスかな」  「クラス委員とかやらされるんじゃない?」  「宿泊学習もさ〜面倒だよね」  「ねえ」  溢れてくる涙は嗚咽とともに不器用なリズムを取る。上手く息が吸えないまま、真新しい制服が砂と涙でぐちゃぐちゃになった。もう意味もない、アイツが居ないから、別にこんな制服に意味は、ない。恋慕でなくともきっと心惹かれていた。それには間違いなかった。アイツもそれは同じはずだった。じゃなきゃこんなこと頼めないはずだし、だから形こそ不格好だけれど私とアイツは両思いで、それがこんな形の終わらせ方を作ってしまった。ただそれだけのこと。ただ、それだけの。この校舎で初めて聞いた大きなチャイム。入学式が始まる時間。今頃先生たちは新入生代表の生徒がいなくて慌てふためいているんだろうな。  「でもさ、生徒たち、これからもっと慌てるんだろうね」  「止めてあげられなくてごめん」  「死にたいって言ってたのに、何も言えなくて、何もできなくて、ごめん」  「ごめん」
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加