おめでとうを、君に

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 アイツのもう一つの癖。ことある事に何度も何度も空を見ながら「死にたい」と呟いていた。勉強もできて顔もいい、友達だって充分いる人のその言葉に軽さを感じてしまった私の冷たさが今こうやってアイツを揺らしてるんじゃないのか。もっときちんと聞いていれば、もっと知れていたら。もっと。もっと。思考を遮るように遠くの方で先生たちの声がした。そろそろ時間かな。そうだ、あのね、こんな声でごめんだけど。  「おめでとう」  桜の木の下で首を吊る新入生代表の生徒は、偶然今年だけこの時期ぴったりに咲いた満開の桜の花びらに抱かれながらゆっくりとゆっくりと揺れている。私のクラスメイトで、私の、友人。そんな君に心からの、おめでとうを。  せめていつも見上げていたあの雲のように、どうか自由に。
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