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おめでとうを、君に
珍しくこの季節にふさわしい咲き方をした桜。いつもは少し咲くのが早くて残念がられていたのに。今年は良かったね、なんて桜の肩を持ちながら歩くあまり馴染みの無いこの道はどんな思いにも馳せることはなく、私にとってはただのアスファルトのままだった。道も制服も、きっとこれから出会う友人たちも、全てが新しいはずのこの春がまだ中学3年生の春休みの延長にしか思えないままで。
「そういえばアイツ、ちゃんと来てるのかな」
独り呟いたその対象はこれもまたただのクラスメイト。たまたま席が近くて、受験する高校も同じで、だからか当たり前のように自然と話す時間も増えていった。恋慕に繋がるような何かが起こることもなく私たちは春を突き進み、無事にこの高校に合格した。だからきっと今頃アイツも、新しい制服に身を包みながらもこの道に特別な何かを思うことなくとぼとぼと歩いていることだろう。
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