Mr.Lonely black dog,Miss Tiny stray cat.

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 結局梛さんと衣鞠さんは、決めかねて、全ての式をすることにした。 「まず都内のホテルで関係者向けの式挙げて、次に名古屋でお披露目して、ハネムーンがてら海外で挙式。身内やプライベートな友達はそこ招びたいんだけど、茉緒、パスポート持ってる?」 「ありますけど…さすがに平日に海外には…」 「そっか〜。春ちゃんも楽が飛行機乗れないから無理って言うしな〜。でも、都内の式はマスコミいっぱい来るから、あとは名古屋の披露宴だけど…」 「名古屋のお式ってどんな感じなんですか?」 「派手。とにかく派手。最近はそこまでしない人もいるけど、うちの親は間違いなく全部やりたい派」 「なんか、トラックに箪笥積んで練り歩くんじゃなかったっけ?」 「交通事情的にそれ、許されるのかね」  梛さんも、あまり気が乗らなそうに言う。 「でも衣鞠、名古屋の名誉市民なんでしょ?市長公認でパレードくらいやるんじゃないの?」 と梓が、からかう様に言う。 「名誉市民て訳じゃないけど…人寄せパンダ扱いはされてるかな」 「私、名古屋って行ったことないです」 「んー…じゃあ、そっちにする?うちのおかん、バリバリ名古屋のおばちゃんだけど」 「でも衣鞠さん、名古屋弁も訛りもないですね」 「テレビの仕事する様になって、死ぬ気で直したんだよ。地元帰ると、すぐ戻るから」 「こいつとおかんの会話最初聞いた時、マジ何言ってるかわかんなかった。超早口で喧嘩腰だし」 と、梛さんが笑った。 「海外って、どこにしたの?」 「スペイン。バルセロナから一時間くらいのとこに、海沿いに立つチャペルがあってね。ヴィラも近くにあるから」 「スペインか〜。せめて八月なら、無理して行けたのに」  梓が残念そうに言う。 「梓、スペイン行ったことある?」 「マドリードの方はあるよ。バルセロナ、行ってみたかった」 「何があるんだっけ」 「サグラダファミリアって、絶賛建築中の教会とか」 「ああ、とうもろこしみたいなの」 「それ。とか、ステンドグラスが有名な音楽堂とか、ガウディが設計した公園とか」 「面白そうだね」 「だから、おいでって。連れてってあげるから」 と、また最初の話に戻って来た。 「最短で何泊で行けるんですか?」 「弾丸ツアーで二泊四日ぐらい?」 「バルセロナにたった二泊なんて、勿体無いよ」 と梓も抗議した。 「じゃあやっぱ名古屋かぁ。残念、ビーチで茉緒に着せたい水着があったのに」 「水着だけ貰っとくよ。今年の夏、着させるから」 と梓がねだるが、私は着るとは一言も言ってない。衣鞠さんだって、私に際どいビキニを着させる気はないだろうけど。 「あたしが見れなきゃ意味ないの。茉緒、今年の夏、あたしとバカンス行く?」 「…国内なら」  この人達にうっかりおねだりなんてしようものなら、すぐにセレブなビーチに連れて行かれてしまいそうだ。 「え〜?ニース辺り行こうよ〜」  思った通りだ。ニースって、どこの国だっけ。 「一般人に無茶言わないで下さい」 「あ、そうだ、ドレスはこっちで用意するから」 「え、招ばれてる側なのに、そんな」 「いーの、茉緒の着せ替えはあたしの趣味だから。あ、梓は自前のでいいよ」 「助かった」  衣鞠さんのセンスは信じているけど、あまり目立ちたくはないので、出来れば私も自前の服で出たい。  アイドルみたいなドレスが用意されていたらどうしよう。
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