44人が本棚に入れています
本棚に追加
結局梛さんと衣鞠さんは、決めかねて、全ての式をすることにした。
「まず都内のホテルで関係者向けの式挙げて、次に名古屋でお披露目して、ハネムーンがてら海外で挙式。身内やプライベートな友達はそこ招びたいんだけど、茉緒、パスポート持ってる?」
「ありますけど…さすがに平日に海外には…」
「そっか〜。春ちゃんも楽が飛行機乗れないから無理って言うしな〜。でも、都内の式はマスコミいっぱい来るから、あとは名古屋の披露宴だけど…」
「名古屋のお式ってどんな感じなんですか?」
「派手。とにかく派手。最近はそこまでしない人もいるけど、うちの親は間違いなく全部やりたい派」
「なんか、トラックに箪笥積んで練り歩くんじゃなかったっけ?」
「交通事情的にそれ、許されるのかね」
梛さんも、あまり気が乗らなそうに言う。
「でも衣鞠、名古屋の名誉市民なんでしょ?市長公認でパレードくらいやるんじゃないの?」
と梓が、からかう様に言う。
「名誉市民て訳じゃないけど…人寄せパンダ扱いはされてるかな」
「私、名古屋って行ったことないです」
「んー…じゃあ、そっちにする?うちのおかん、バリバリ名古屋のおばちゃんだけど」
「でも衣鞠さん、名古屋弁も訛りもないですね」
「テレビの仕事する様になって、死ぬ気で直したんだよ。地元帰ると、すぐ戻るから」
「こいつとおかんの会話最初聞いた時、マジ何言ってるかわかんなかった。超早口で喧嘩腰だし」
と、梛さんが笑った。
「海外って、どこにしたの?」
「スペイン。バルセロナから一時間くらいのとこに、海沿いに立つチャペルがあってね。ヴィラも近くにあるから」
「スペインか〜。せめて八月なら、無理して行けたのに」
梓が残念そうに言う。
「梓、スペイン行ったことある?」
「マドリードの方はあるよ。バルセロナ、行ってみたかった」
「何があるんだっけ」
「サグラダファミリアって、絶賛建築中の教会とか」
「ああ、とうもろこしみたいなの」
「それ。とか、ステンドグラスが有名な音楽堂とか、ガウディが設計した公園とか」
「面白そうだね」
「だから、おいでって。連れてってあげるから」
と、また最初の話に戻って来た。
「最短で何泊で行けるんですか?」
「弾丸ツアーで二泊四日ぐらい?」
「バルセロナにたった二泊なんて、勿体無いよ」
と梓も抗議した。
「じゃあやっぱ名古屋かぁ。残念、ビーチで茉緒に着せたい水着があったのに」
「水着だけ貰っとくよ。今年の夏、着させるから」
と梓がねだるが、私は着るとは一言も言ってない。衣鞠さんだって、私に際どいビキニを着させる気はないだろうけど。
「あたしが見れなきゃ意味ないの。茉緒、今年の夏、あたしとバカンス行く?」
「…国内なら」
この人達にうっかりおねだりなんてしようものなら、すぐにセレブなビーチに連れて行かれてしまいそうだ。
「え〜?ニース辺り行こうよ〜」
思った通りだ。ニースって、どこの国だっけ。
「一般人に無茶言わないで下さい」
「あ、そうだ、ドレスはこっちで用意するから」
「え、招ばれてる側なのに、そんな」
「いーの、茉緒の着せ替えはあたしの趣味だから。あ、梓は自前のでいいよ」
「助かった」
衣鞠さんのセンスは信じているけど、あまり目立ちたくはないので、出来れば私も自前の服で出たい。
アイドルみたいなドレスが用意されていたらどうしよう。
最初のコメントを投稿しよう!