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五日間の実習は、あっという間に過ぎた。
治療自体は見学だけだけど、久し振りの訓練室の空気は気が引き締まったし、浅見科長の言う通り、教科書で学ぶのと、実際の患者さんを目の当たりにするのとでは、臨場感が全く違う。授業では病気や怪我は試験問題でしかないけれど、患者さんにしてみれば、その不自由は現実であり、場合によっては死活問題なのだ。
私が出来たのはせいぜい、待ち時間に話相手になって、治療の愚痴や家族の話を聞くぐらいだったけど、辛い入院生活で、多少でも気が紛れてくれればいいなと思った。
忙しいであろう療法士さん達も、嫌な顔一つせずに見学させてくれて質問にも丁寧に答えてくれたし、初めての実習は充実して終わった。
実習の最終日、リハ科の方々が、お疲れ様会をしてくれた。
「穂坂さん、一週間お疲れ様」
「お世話になりました」
「どうだった?」
「こう言っては何ですが、楽しかったです。勉強になりましたし、実際の患者さんとも交流出来て」
「穂坂さん、お年寄りに可愛がられるタイプだよね〜」
「勉強熱心だったしね。あのメモ帳、一週間で埋まってたし」
「あとは、トランスファー出来る様に頑張って」
「う、はい」
業務の合間に移乗の練習も見てくれて、色々とアドバイスを貰った。コツやタイミングはわかってきたが、最終的には私の体力と練習あるのみと言う結論になった。
「家、近所なんでしょ?また遊びにおいで」
「はい、ありがとうございます」
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