Mr.Lonely black dog,Miss Tiny stray cat.

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 最初、私もそっちへ招ばれたが、さすがに平日に学校を休んで海外旅行へ行く訳にもいかず、名古屋の式に行かせてもらうことになった。両親である伯父様と瞳子さんは全ての式に参列する様だが、勤務医の櫂先生と、乳幼児を抱えた春妃先生は、私達と同じく名古屋の式に出席する。 「水曜、披露宴の後、槙が飲もうって」 「槙さん、都内の式に出るんだ?」 「従兄弟だけど、仕事関係でもあるからね。会社通して招待されたのかも」 「そうなんだ」  梓の従兄弟の槙さんは大手化粧品会社に勤めており、衣鞠さんが立ち上げたファッションブランドと提携してコスメを作っていた。趣味のカメラはセミプロ級の腕前で、梛さんの美容院のフライヤーの撮影も受け持っているので、新郎新婦共に関わりが深い。 「水曜、来れる?」 「私は大丈夫だけど…梓でしょ。定時で帰れそう?」 「茉緒、また会社に迎えに来てくれない?」 「え?…いいけど、何で?」 「茉緒を待たせてるって言えば、上司も帰らせてくれるかなって」 「だから、ホントそんなの大丈夫なの?私が会社の人に嫌われちゃう」 「嫌わないよ。茉緒がウルウルした目でオレの上司に“まだ帰れませんか?”って訴えてくれれば、すぐ解放してくれるから」 「“まだだよ!”って怒られて終わりな気がするけど」  梓は一体、私に何をさせる気なんだ。 「それならそれで、先に行ってて。槙の会社も近いし、あの辺で店決めておくから」 「…わかった」  あの会社へ出向くなら、また頑張って大人な服を着て行かないとダメだな。それに以前梓をサボらせて送り迎えさせてしまったから、菓子折りも用意しないと。
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