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それでも、瞳子さんのご機嫌を取る為に、行きがけにお好きな銘柄のお酒とおつまみを手土産に買って行き、六時頃、遠宮のお家に伺った。
「いらっしゃーい。瞳子さんがお待ちかねだよ」
と、玄関に出迎えに出てくれた春妃先生が言った。
居間へ行くと、瞳子さんは、マックに跨った楽くんの写真を、床に這いつくばって撮っていた。
「なんてカッコしてんの、瞳子さん」
「あ、やっと来た!」
「今年もお世話になります」
マックは、救世主が来たとばかりに尻尾を振り、楽くんを乗せたまま立ち上がろうとしたので、梓が慌てて駆け寄って受け止めた。振り落とされかけた楽くんは、一瞬びっくりした顔をしたものの、すぐに楽しそうに笑い出したので、こちらも大物になりそうだと思った。
私達のすぐ後に梛さんと衣鞠さんもお越しになり、皆揃ったところで、夕食が始まった。
恒例の芙美さんお手製のお蕎麦だが、今年は鴨南蛮だ。
「で、何、茉緒ちゃんまでシカゴに行ってたの?」
「はい。梓の出張が延びた五日間だけですけど」
「クリスマス、一緒に過ごしたかったから」
「クリスマスだからって、わざわざ呼び寄せたのか?」
「お前、会社に何て駄々こねてるんだ…」
と男性陣は呆れ顔で言ったが、梓は堂々と
「だって、クリスマス前には帰れるって言われたから出張引き受けたのに、いきなり延びたんだよ。話違うじゃんてなって」
と言い返した。
「クリスマス基準で出張断ろうとする梓も凄いよな」
梛さんが、むしろ感心した様に呟いたが、同じくグローバルな活動をされている衣鞠さんは、
「じゃあしょうがないよね。当然の権利だよ」
と頷いた。
「いいなぁ、海外でクリスマスなんて。イルミネーションとか綺麗でしょ?」
と、子育て中で外出が制限されがちな春妃先生が、羨ましそうに言う。
「二十メートルくらいあるクリスマスツリーがありました」
「すごーい。後で写真見せて」
「はい」
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