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「瞳子さんと春妃先生と衣鞠さんと芙美さん、お好きな物を選んで下さい」
遠宮家の女性陣は皆セレブなので、私が買える様な品があるか悩んだが、害にはならないだろうレベルで、オーガニック製品のお店のアロマ石鹸を何種類か買ってみた。もしかしたらお正月なので柚さんや槙さんにも会うかもと思い、少し余分に用意した。石鹸なら、余れば自分で使えばいいのだ。
とりあえず並べて、それぞれに選んでもらった。
「色んな種類があるのね。悩む〜」
「伯父様へは、文鎮なんですけど」
「猫かい?」
「エジプトの、病気や悪霊から護ってくれる神様らしいです」
「良い神様だな。ありがとう、大事にするよ。だが、何故エジプト?」
「自然史博物館のミュージアムショップで選んだので」
「成程」
梛さんには、ロシアンルーレット的に様々なフレーバーがある、ちょっと高級なチョコレートの詰め合わせを買ってみた。
「梛さん、甘い物お好きだって聞いたので、チョコレートです。色んな種類があるみたいなので、お店のスタッフさんと召し上がって下さい」
「お、サンキュー。そう言えば今日、可愛い髪型してるね。自分でやったの?」
折角なので、梓が習得したヘアアレンジを、今日もやって貰って来た。
「あ、いえ、梓が…」
「お前〜、オレの取り分、持ってくなよ〜」
「茉緒の髪を、出来るだけ他の男に触らせたくないからね」
と、またも恒例のやり取りが始まった。
「これは楽くんへ、恐竜のパペットです」
「あら、ありがと…って、結構リアル…」
「これも博物館のミュージアムショップの物なので、実物に忠実と言うか…」
「楽は泣かないわよね〜。強い子だものね〜」
早速瞳子さんがパペットを手に嵌めて、楽くんの目の前で牙が剥き出しの口をパクパクさせると、楽くんは、面白そうに手を叩いた。うん、やっぱり大物だ。
「櫂先生は…」
私は、大人っぽくて落ち着いた印象の櫂先生にはマグカップか何かを買おうと思ったが、梓が選んだのは、思いがけないものだった。楡くんへのお土産とかと間違えていやしないかと何度も確認したが、梓は確信を持って断言した。
「えっと…恐竜の頭骨の立体パズルなんですけど…」
とおずおずと差し出してみると、櫂先生が固まったので、慌てて
「あの、マグカップか、どちらかお好きな方を…」
と勧めると、
「あ、パズル!恐竜のパズル欲しい!」
と、食い気味に言われた。
「櫂ね、恐竜も好きだし、骨も好きなの」
春妃先生が、やれやれと言う感じでそう教えてくれた。櫂先生の意外な嗜好に驚いたが、そういう少年の様なところがなんだか微笑ましい。
「ありがとう、茉緒ちゃん」
両手でしっかりとパズルの箱を受け取った櫂先生に、春妃先生は
「良かったわね、櫂」
と母親の様に言った。
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