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家系図を一本の木に見立てた図を見たことがある。以前の私は、枝から離れひらひらと舞う、一枚の葉の様な存在だった。そのまま地面に落ちたり川に流されてもおかしくなかったのに、大切に拾い上げてくれた人のお陰で、私にも、宿るべき枝が出来た。
「ねえ、梓」
「ん?」
「一緒のお墓に入ろうね」
と言うと、私が脱いだ着物を畳んでくれていた梓は、せっかく畳んだ着物をぐしゃっと乱した。
「どう…したの、いきなり」
梓は、着物を畳み直しながら、怪訝そうに尋ねた。
「日本のお墓っていいよね。亡くなってからも、ずっと一緒にいられるんだもん」
「…そういう考え方もあるね」
「そこでなら、お義父さんにご挨拶も出来るし」
そう言うと、梓は私を抱き寄せた。
「…うちの墓に入ってくれるんだ?」
「シカゴで散々“フィアンセ”って言いふらしといて、今更?」
「ありがとう。でも、まだ全然先の話だからね。あ、墓に入るのがね?まだ当分は、現世で一緒にいてよ?」
「わかってるよ。ボケ老人になった梓の面倒みるんでしょ」
「そうだよ。並んで縁側に座って、猫を膝に乗せて日向ぼっこしたりしてね」
「猫飼ってもいい?」
「晩年にね。それまではオレを可愛がって」
「えー、もっとモフモフがいいのに」
と梓の髪をくしゃくしゃと撫でる。
「もっと毛深い方がいい?」
「しょうがないから、今のままでいいよ」
と言うと、梓にキスされた。
「茉緒は、猫みたいに柔らかくて猫より可愛い」
と、私を抱き上げる。
「可愛がってくれる?」
「幾らでも」
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