告白予行練習

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告白予行練習

春といえばなんだ。 桜か?花見か?鶯か? どれも不正解、そう春といえば出会いの季節である。 桃色の季節に浮き足立つのも無理はない、俺だって今日まではそうだった。 そう、今日までは……。 下駄箱にラブレターが入っていたんだ。 あのラブでコメディなマンガでしか見ない手法だと思っただろう、マジなんだよこれが! いかにも女の子が使いそうな可愛い封筒、便箋にはこれまた可愛い文字で「放課後、中庭の桜の横」って書いててさ。 この世に生を受け早17年、ついに俺にも春が来たってわけ。 放課後、入念に手を洗って髪を整えてスキップしそうになりながら中庭に行った。 でも誰もいなくてさ、イタズラも疑った。 いや、これにはまだ続きがあるんだ。 なんと桜の木の横に花壇があるんだが、隠すように朝見たのと同じ便箋があったの。 「音楽準備室に来てください」 そんなもん行くに決まってるよな? んで音楽準備室行ったら「2-Aの教卓」、次は「3階廊下の掃除用具入れ」、「保健室脇の机」、「理科室の扉」、「視聴覚室、窓側1列、教卓から2番目」 こんだけ焦らされても怒りとか湧いてこなくて、逆にどんどん期待が大きくなってってた。 こんな大がかりな仕掛けを用意して待っててくれる女の子ってどんな子なんだろうとか、返事ってその場でした方がいいのかなとか、そもそも告白されるときのポーズとかどうするべき?とか。 もうドギドキが止まらなくて指定場所までダッシュよ。 よく考えてみてくれ、俺はこれまでとくに可もなく不可もなくモテることもなく生きてきた男子高校生だぞ?テンション上がるに決まってるだろ。 息も絶え絶えになりながら指定場所へダッシュすること、あーもう何回目だ? だが俺はついに手に入れた、最後の便箋を……。 「次で最後です、 屋上に来てください」 そうついに最後!やっと会える! それも屋上!屋上で告白憧れたよ! 嬉しくてたまんねぇよなぁ! 近年稀にみる命燃やすレベルのダッシュで屋上を目指した。 屋上行ったら誰もいなくて、あの封筒が風に飛ばされないように置かれていた。 ここまでしたけど会うの恥ずかしくなっちゃったからお手紙ごしに告白してくれるのかな? 俺の心のロマンティックが止まらない。 深呼吸をして天を仰ぐ、今日も空は綺麗。 神さま仏さまご先祖さま、俺に訪れる春を見守っててください。 意を決して中を見る。 「ご協力ありがとうございました」 そりゃないよ。 *
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