⭐Lv.11 悪霊の臓物

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⭐Lv.11 悪霊の臓物

『悪霊の臓物 パート3』 これまでのお話・・・ 俺の名はジャック・アバンスキー・・・大学3年、アメフト部に所属していたガタイが良いだけの平凡な男だった。 三年前、毎年行われている妹、アリスの誕生日に起きた惨劇を迎えるまでは・・・ 親戚や妹、俺の友人たちが集まり病弱な妹を元気づける誕生会・・・妹の友人が、この日プレゼントに持ってきたのは古びた魔術書のようなアンティーク品でオカルト好きな妹はとても喜んでいた。 「数えるほどしか学校に行ってないのに、誕生日を祝ってくれる友達がいるなんて私は幸せだなぁ」 アリスは他の友人から貰ったと言う、ツギハギだらけの大きなウサギのぬいぐるみを抱き、書物をめくりながら俺に言った。 「そうだな。あとは、身体が良くなればもっと幸せになれる。お友達たちは、もう帰ったのかい?」 「えぇ、暗くなる前におじさんが車でみんなを送ってくれたわ」 「それにしても、その不気味なピンクのウサギのぬいぐるみは流行ってるのか?」 「えぇ、ウサゾンビちゃんよ!可愛いでしょ?」 左の片眼が抉られ、ポッカリ穴があいているのに笑っているウサゾンビを俺は可愛いとは思わなかった。 裕福な家庭、優しい両親と親戚たち、妹が生まれつき身体が弱いという事以外は完璧だった。 「おーい、ジャック!またアリスちゃんにベッタリかよ?ちょっとは俺らにも付き合えよ!」 アメフト部の仲間に呼ばれ、俺はアリスの元を離れ仲間たちと今日、何度目かわからない乾杯を交わした。 「このページ・・・次のページに貼り付いていてめくれないわ」 アリスは爪をひっかけ、そのページをペリペリとめくった。 めくったページは白紙だった・・・が、次の瞬間! 真っ赤に染まったページは血溜まりとなり、中から恐ろしい形相の女が表れアリスの身体に入り込んだ。 アリスの悲鳴と共に、雲一つ無い夜空から雷が落ちアリスの部屋を直撃した。 「アリス!!」 真っ先に部屋に飛び込んだジャックの眼前には、下を向いて立ち尽くしているアリスがいた。 「良かった、アリス・・・無事だったんだな!」 ジャックはアリスに両手を伸ばした。 しかし、アリスの髪の毛が生き物のように動きだし、青い炎を纏ってジャックの左腕を焼き切った。 「う、うわぁぁぁぁぁ!?」 その突然の出来事により、悲鳴をあげながら後ろに倒れたジャックは頭を強く打ち、失神してしまう。 「お兄ちゃん、お兄ちゃん!」 アリスの声が聞こえる・・・さっきのは夢か?きっと、飲み過ぎたんだな。 目を開けると、そこにアリスの姿は無く、かわりにウサゾンビのぬいぐるみがあった。 「良かった、お兄ちゃん・・・」 「なんで、ぬいぐるみからアリスの声が!?」 「これは、私の想像だけど・・・あの書物は何かを封印していたみたいで、私がそれを解いた事により邪悪な何かに身体を乗っ取られ、弾き出された魂が人形に入り込んだみたいなの」 左腕に痛みが走る・・・焼き切られた事で出血が少なかったのは不幸中の幸いだった。 封印から放たれた何かは『大悪霊ノルデーモ』と名乗り、親戚、友人を次々と惨殺していった。 俺は両親の助けにより、屋敷からぬいぐるみとなった妹と共に脱出し妹の友人たちを送迎して戻ってきたおじさんの車で街へと逃げる事ができた。 恐怖に震えながら、俺はぬいぐるみになったアリスを見つめる。 最後に両親が言った言葉を思い出す。 「生きろ、アリスを頼んだぞ」 「生きて、二人とも愛してるわ」 生きるとは、何か? 悪霊に怯えながら、息を潜める事が生きるという事だろうか? 「違う、怯えながら過ごすべきは悪霊だ。俺は貴様の臓物を引きずり出してやる!」 こうして、俺は悪霊を封印していた書物について調べる事で悪霊を封印した一族にたどり着いた。 やっとの思いで会うことができた悪霊退治一族の男『ジェフリー』は、酒瓶を片手にした腹の出た中年だった。 無造作に伸びた黒髪を後ろで結い、髭も手入れをしておらず汚ならしい風貌だ。 くたびれた革のジャンパーに洗った事があるのかも怪しい古びたジーンズ・・・良く言えば、年季が入っているとも言えなくも無い。 「はぁ~ノルデーモが甦った?そんな訳があるか。封印の書物は教会で管理されてる。デタラメ抜かすんじゃねぇぞ!クソガキが!全く、話にならねぇぜ」 ジェフリーは、すぐに教会に連絡したが連絡がつかない。 確かめる為に、教会がある村へと向かうジェフリーに俺たちは同行した。 「こいつは・・・どうなってやがる!?」 村にある教会も民家も焼かれており、村人たちの惨殺死体が転がっていた。 「どうやら、お前らが言っていた通りらしいな。誰かが教会から書物を奪いお前の妹に封印を解かせた・・・恐らく、ノルデーモを命をかけて封印したシスターの血をお前らは引いている。詳しく事情を聞かせてもらうぞ」 「今まで、耳を貸そうともしなかった癖に・・・情報提供はしよう。ただし、条件がある。俺たちに悪霊退治を教えてくれ!」 こうして、俺とアリスはジェフリーの指南を受け悪霊退治のスキルを1年半かけて身につけた。 そして・・・大悪霊ノルデーモと、ヤツを崇拝する異教徒との戦いが始まった。
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