Lv.131 決戦は金曜日 その2

1/1
前へ
/140ページ
次へ

Lv.131 決戦は金曜日 その2

観覧モニターは4分割されており、美亜、香住、晶の三人は4人が集中できるように離れた場所からそれを見ていた。 「今のところ、順調に進んでる感じだな」 「麗美さんが指示出してくれてるから、骨のヤツから逃げれてるけど・・・私だったら、やられてそうだわ。難易度高そうだから心配だわ」 「初日組と2日目組で、現れる骨の化物も様相が違いますね」 美亜の言うように、今のところ骨の化物・・・通称『餓者(がしゃ)』は人型、蛇型が姿を見せていた。 「あぁ、社長から聞いたけど『餓者』っていうんだってよ。餓者は姿によって襲いかたも違うから、どの餓者が追いかけてきてるか判断するのも攻略のポイントらしいぜ」 初日組の二人を襲ってきたのは蛇型の餓者で、木を伝って現れたりと神出鬼没だがシュルシュルと音を立てる為、音に気をつけて行動すれば遭遇自体を避ける事ができる。 「美樹ちゃん、そっちから音入ったで!迂回して進もう!」 「了解!コテージまで行けば、とりあえずOKですよね?」 「せや、焦らんで良いから少しずつ進もう!もし、襲われても美樹ちゃんのキャラが持っとるキャンプ用ガスバーナーを使えば、餓者は火を怖がって逃げてくから大丈夫や!」 同時進行中の礼治と中嶋のキャラは、餓者に対して有効なアイテムを最初から持っていないので初日組より、やや難易度が高い。 「礼治君と中嶋ちゃんは、人型と遭遇する炊事場に行く前にキャンプ用のペグハンマーを一緒に来てるモブキャラから借りておくんやで!逃げきれないと思ったら、それを餓者に投げつければ1回だけ追い返せるから!」 「了解です。そういえば、NPCと全く話してなかったな」 「私は初期アイテムで地図を持っているので、コテージまでの道を覚えておきますね」 二人は人型餓者に追いかけられ、林道に逃げ込む。 以前は恐怖で操作ミスをしてしまったが、今回は落ち着いて行動できた為、難なく振りきれた。 「ハンマーは温存できました。コテージへ向かいます」 先に(ゲームの世界だと1日)待っていた野中、麗美と無事にコテージで合流を果たす。 「まず、4人揃うとこまでは来ましたね!」 「せやな、順調、順調!ほな、セーブしよか」 セーブも完了し、今日はここまでにしようとした矢先・・・ドアが開く音がした。 「誰かが入って来た?」 「ま、まさか餓者!?」 「セーブポイントに餓者は入ってこれないように設定しとる。それは無いハズやで」 戸惑う三人を尻目に中嶋はコテージの入口へと向かって行く。 そこに居たのは、およそキャンプ場には似つかわしくない姿の少女だった。 サラサラの黒いロングヘアー、髪型は後ろ結びのツインテール、大きな瞳、低い身長の割にはボリュームのある胸・・・服は赤いゴシックドレスに黒いショートマントを羽織っている。 「・・・花音、やな?」 中嶋の後を追い、やってきた麗美が少女に問いかけた。 「お久しぶりです、麗美先生」 少女はスカートの両端を手で摘まみ、脚を軽く交差させて会釈する。 「この少女が、大方 花音!?」 戦慄が走る中、花音はにこやかに笑い・・・なんと画面の外に飛び出した! 瞬間、礼治が身につけているパワーストーンのアクセサリーが激しく振動する。 その姿は、守護エネルギーの高い美亜にもハッキリ見えていた。 「先生!!大方 花音が飛び出して来ました!」 美亜の声を聞き、ゲームをプレイしていたメンバーは一斉にゴーグルを外して実体化している花音の姿を確認した。 「思ったより、可愛くてびっくり致しましたか?」 尚もにこやかに笑い続ける花音に、麗美が問いかける。 「元気そうやな・・・って言うても幽霊に元気もクソも無いんやけど、何でウチらに呪いをかけてるんや?返答次第では、只では済まさへんからな」 「やだ麗美先生、顔が鬼ババァになってますわよ?私は、ただ皆さんにより素晴らしい恐怖を体感して貰いたかっただけです。哀れな娘が寂しさを紛らわそうと企てた度の過ぎたブラックジョークだと思っていただければ・・・」 「ちゃうなぁ~あんたは、そんなタマやない!目的も無しに、こんな大それた真似せんやろ」 「・・・勘の良いババァは嫌いですわ」 にこやかな笑顔が一変し、不快感を露にしたように口を歪める。 「ワタクシの目的は、呪いの力で完全に意識を奪う事ですわ。生きた人形になっていただき、その身体を頂いて自分を『死者蘇生』致します」 「性格はひねくれとるのは知っとったけど・・・ほんまは優しかったやないか!なんで、こんなんになってしもうたん!?」 「うるさい・・・うるさいうるさいうるさいうるさい!うるせぇーんだよ!親みたいなフリして、中に入ってこないでよ!もう、決めたの・・・奪われるだけで終わる人生なんて、まっぴらゴメンよ!悪い事だってわかっていても、奪ってでも生き返りたいのよ!新しい薬を飲めば、余命半年どころか腫瘍が小さくなり完治の可能性もあるって言われて、すぐに!死んじゃったのよ・・・希望から絶望、こんなの死んでも死にきれない!そう思ったら、このゲームの世界に居たわ」 花音の激情溢れる言葉に対し、誰も何も言えなくなっていた。 「一回目の呪いじゃ、意識を奪う事はできなかった。まぁ、麗美先生の身体は癌に犯されてたから欲しくも無かったけど。できれば、可愛い子が良いからアンタかアンタ狙い・・・」 野中を指差した後、中嶋を指差す花音。 その脇腹に、ズドン!という震脚音と共に中嶋の崩拳が炸裂した!! 「カッハッ!?」 一撃で踞る花音を中嶋は冷血な瞳で見下ろす。 「人に指差しするんじゃないわよ、バカタレが」 そんな中嶋の行動に全員が呆気にとられる中、野中は思った。 あんたも私に初めて会った時、指差ししなかったけ・・・と。
/140ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加