Lv.14 御褒美

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Lv.14 御褒美

映画を見終わった礼治と美亜は、互いの感想を述べた。 「いや~なんていうか、目を覆いたくなる怖いシーンよりストーリーが気になって目が離せなかったって感じでしたね」 「私は、アリスちゃん!って、感じでした。あんなマスコットかつヒロイン的な役回りで黒幕とか、怖いシーンより衝撃的でした」 特に怖かったシーン、感動したシーン、思わず笑ってしまったシーン、気に入った台詞・・・一つの映画の話題で沢山話をした。 「ちょ、皇さん!もう、こんな時間ですよ!?」 時計の針は深夜2時を過ぎている。 「夢中になって話すぎましたね・・・寝室にご案内します」 二階に上がると、ドアが三つある。 その一つを開けると・・・ベッドが二床並んでおり、その間には24インチテレビ、クローゼット、小さな冷蔵庫、カーテン付きの窓、ドアが1つあった。どうやら、寝室らしいが・・・礼治はそれより何よりベッドが人一人分のスペースがあるとは言え、並んでいる事に動揺した。 「奥のドアを開けると御手洗い、洗面所と歯ブラシ、歯みがき粉、コップもありますよ」 「いや、皇さん・・・流石に一つの部屋に男女が寝るのは早すぎやしませんか?正直言って、二人で映画見て、沢山お話して、これまで以上に距離は縮まった感じもしますし、一緒にいて楽しいって思いました。が、やっぱり早すぎやしませんか!?」 「楽しかった・・・ですか?凄い!ホラー克服計画、順調じゃないですか!私も、楽しかったですよ!では、また明日、おやすみなさい」 そう言って、ドアを閉めた美亜を見届け・・・ドアを開け閉めする音を聞いた。 二階には、どうやら寝室が三つあるらしい。 あぁ、動揺して変な事を言ってしまった・・・「え?何、この人・・・まさか、同じ部屋で一緒に寝ると思ったの?キモッ!」とか思われたかなぁ? そんな事を考えていると、礼治は自分の心境に変化がある事に気づく。 礼治にとって、美亜はいきなり現れて尽くしてくれる得たいの知れないお嬢様であり僅かながら恐怖を感じていた。 何か企んでいるのでは?何なら、嫌われても構わないので日常を今まで通りに過ごしたい・・・とまで思っていた。 それが、今日の事を通して嫌われたく無いと思うようになった。 「思えば、親しくして欲しいと言われたが、自分は皇さんに友人になって欲しいとは思っていなかったんだよな・・・」 ふと、窓を見ると・・・先ほどの映画で窓から突然、悪霊が襲いかかってきたシーンを思い出した。 予期せぬタイミングだった為、二人とも思わず声をあげて驚いた。 ちなみに、防音もバッチリらしく怖かったら、いくらでも声を出してOKという話だった。 ビックリしたシーンだったが、二人一緒に声をあげた事が何だか微笑ましかった。 そんな事を考えていると、ドアをノックする音が響く。 「す、皇さん?どうかしましたか?」 「あの、ちょっとお邪魔しても宜しいですか?」 思いもよらぬ展開に、礼治は戸惑いながら美亜を部屋に入れた。 「どうしたんですか?」 「なんか、窓を見ていたらさっきの映画のワンシーンを思い出して・・・」 「あー!わかります、それ!実は、僕も窓を見た時に思いました」 「そうなんですか?少しだけ、隣のベッドお借りして良いですか?」 結局、映画の話で再び盛り上った二人・・・先に美亜が眠ってしまい礼治は美亜に毛布をかけて眠りについた。 翌日、目を覚ますと美亜はすでに起きていた。 しかし、頭を押さえたまま、ベッドに横たわっている。 「おはようございます。皇さん、具合悪いんですか?」 「はい・・・頭痛持ちでして・・・すいません、先生。私の寝室から、薬を持ってきていただけませんか?」 礼治は美亜の寝室に入り、薬の入った紙袋を手に取り冷蔵庫から出したミネラルウォーターを美亜に手渡す。 「ありがとうございます」 礼治は小さく頷いて、部屋を出た。 2~30分して、ようやく痛みが治まった美亜はゆっくり階段を降りて居間へ向かう。 キッチンからフライパンで焼く音が聞こえる。 見ると、そこにはエプロン姿の礼治がいた。 「え?先生、料理してるんですか?」 「あ、皇さん。具合大丈夫ですか?昨日のお礼にブランチでもと思いまして」 目玉焼き、焼きソーセージ、サラダ、トーストがテーブルに並べられた。 「我ながらショボいな・・・良かったら、食べて下さい」 「あ、美味しい・・・」 「思いの外、美味しいですね!食材が良いからかな?」 礼治が美亜の顔を見ると、膨れっ面をしていた。 「え?なんか、怒ってます?」 「もー!土曜日は、私が先生に御褒美あげるって言ったのに!私が喜んじゃったら、話にならないじゃないですか?」 ジェフリーの口癖を絡めて、恥ずかしそうにする美亜を見て礼治は何だか不思議な気持ちになり穏やかに思いを伝えた。 「そんな事で膨れてたんですか?昨日、美亜さんと過ごした時間が、既に御褒美みたいなモノですよ。あらためて、ありがとうございました」 礼治の言葉を聞き、美亜は顔を赤らめた。 「今、美亜って呼んでくれました?」 「あ!すいません、馴れ馴れしく呼んでしまって・・・不快でしたよね?」 「いえ、寧ろ気に入りました。今後も名前で呼んで下さい!」 「は、はい。それから、前に親しくして貰えたらって言ってくれましたよね?あらためて、僕からも言わせて下さい。すめら・・・美亜さん、こちらこそ親しいお付き合い、宜しいお願いします」 礼治の言葉を聞き、再び美亜は顔を赤らめた。 「もー!だから、土曜日は私が先生に御褒美あげるって言ってるじゃないですか!私を喜ばせないで下さい!」 礼治は苦笑いを浮かべ、トーストを頬張った。
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