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Lv.15 たかせ あきら
「エッチはしなかったんですか?」
お昼休み、美亜の話を聞いていた磯野の発言で中嶋が牛乳を吹き出した。
「え、エッチですか!?そもそも、私は先生と交際してませんし!」
磯野は不思議そうな顔で美亜に問いかける。
「美亜様は、もう先生の事を好きですよね?その尽くしようは、そうでなければ逆にヤバいですよ」
美亜は磯野の言葉を聞き、顔を赤らめた。
それを面白くなさそうに目を細めて見つめる中嶋。
「一回くらいホラー映画を見たからと言って、ホラー克服にはならないですよ!今は先生がホラー小説を続けられるようにするのが先決かと!」
「そ、そうよね!中嶋さんの言うとおりだわ」
中嶋の意見に同意を示す美亜を今度は磯野が目を細めて見つめながら言う。
「そんなの、同時進行で良くないですか?それに、先生は美亜様を名前で呼んだんでしょ?好意があるに決まってるじゃないですか!」
「ちょっと、磯野!名前で呼ぶだけで好意があるなんて考えが隔たりすぎてるわよ!」
言い争う二人を美亜は苦笑いで仲裁した。
「まぁ、それより次の計画をお二人に相談したいんですよ。二人はホラーはお好きですか?」
「私は邦画、洋画のホラーは良く見てましたよ。父が好きなので」
磯野に続き、中嶋も答える。
「私は、アニメや漫画、ゲームのホラーは好きですね。あ、そうだ!美亜様、今度で良いので『骨の森』貸してくれませんか?なんか、発売延期になるらしいので」
「そうなんですか?『骨の森』はホラーレベルが高過ぎるので、使う予定もありませんから明日にでも持ってきますね。で、次は何を見ようかと考えているんですが、何かオススメのホラーは無いですか?」
磯野は少し考えてから、口を開いた。
「私のオススメは『伊藤』っていう邦画ですね。伊藤と呼ばれる謎の道化師に子供たちが立ち向かうホラー映画です」
「一回目が実写映画だったので、次はアニメでどうですか?『不死戯のアリス』がオススメですよ。ただし、通常版とディレクターズカット版があるので通常版の方が良いですね」
「あー!『不死戯のアリス』は私も見たわ!あれ面白かった!実写版は微妙だったけど」
磯野も絶賛した為、次の作品は『不死戯のアリス』に決定した。
仕事の休憩中、礼治は美亜からのラインを見ていた。
「次はホラーアニメかぁ・・・どんな作品だろう?ん、またラインきてるな」
通知は美亜では無く、幼なじみの高瀬からだった。
『今日、休みだから礼治のバイト終わったら飲みに行こうぜ!』
そういえば、高瀬には借りがあったな。
いつもなら小説に時間を費やすのだが、今はそれもできないので久しぶりに飲みに行く事にした。
バイト先から近い居酒屋で待ち合わせし、乾杯してビールを飲む。
「そういえば、こないだのバイトちゃん可愛かったな!女子高生?」
「あぁ、高校二年生だったかな」
「いいなぁ~若い娘と一緒に仕事できてさぁ~ラインとか交換したりすんの?」
「あぁ、交換したよ」
礼治の言葉を聞き、高瀬は箸を止めた。
「マジか!?え、礼治って女に興味無さそうな顔してラインとか交換しようとか言ったりすんのかよ!?」
「いや、美亜さんから交換しようと言われて・・・」
「はぁ!?え、実はモテる人種なのか!?」
「おいおい、モテる人種はお前の方だろ。学生時代、何人泣かした?」
高瀬はビールを飲み干し、次のビールを注文する。
「礼治も次、頼む?」
「いや、ゆっくり飲みたいからまだ良い」
枝豆を食べながら、話を続ける高瀬。
「こっちは働き始めてからは、彼女もいないんだぜ?もしかして、こないだの一件から仲良くなったんか?」
「あぁ、だからお前には感謝してるよ。だが、実はかくかくしかじかで・・・」
礼治は高瀬に現状報告すると、高瀬は神妙な面持ちで口を開いた。
「色々とヤバい感じだな・・・小説を書けないのもそうだが、スメラギの社長令嬢に気に入られてるってのもヤバすぎる。礼治、もし美亜ちゃんに告白されたらどうする?」
「美亜さんが、俺に?無いだろ・・・」
高瀬は海老反りしながら、額に手を当てながら言った。
「カー!いるんだな、リアルに漫画の主人公みたいな鈍感なヤツって!美亜ちゃんは確実に礼治に気があるぞ?何でわからん?そういえば、礼治って彼女いた時あったっけ?」
一杯目のビールを飲み干し、礼治はレモンサワーを注文する。
「無い」
「だよな。てことは、童貞?」
「いや、女性経験はある。デビュー作にセックス描写が必要だったから、風俗に通ったからな」
「・・・素人童貞ってヤツか。礼治、その話は美亜ちゃんに絶対するなよ。どう転んでも好印象にはならんからな!」
「まぁ、そうだな。そもそもそんな会話になるような事は無いと思うが・・・しかし、本当に美亜さんは俺に気があるのか?」
「そんだけ時間も金もかけて尽くしてくれてる時点で好意あるだろ。もし、エッチする雰囲気になったら経験あるか無いかみたいな話になるかも知れんだろ?」
礼治は枝豆を食べながら、高瀬に問う。
「で、なったらどうする?初体験は風俗ですって言うより童貞って言えと?小さな嘘だが、嘘をつくくらいなら作品の為に風俗でって言った方が理解を得られそうな気がするが・・・」
「じゃあ、ウチの姉ちゃんが初体験の相手って事にしとけば?」
高瀬の姉・・・香住さんを?
「いや、何でそうなる?」
「俺ん家に遊びに来た時、何か仲良くなかったか?姉ちゃん、キャバとかでも働いてたし軽い感じでヤっちゃったけど付き合ったりはしなかった・・・みたいな?」
「いや、そっちの方が印象悪くないか?」
男二人が、ああでもない、こうでもないと話を続ける中、夜はふけていった。
「ただいまー」
高瀬が家に帰ると、居間に一つ歳上の姉・・・香住がスウェット姿で水を飲んでいた。
香住は身長164cm、髪は茶髪のロングウルフでややつり上がった二重瞼、スリーサイズは89-59-87のナイスバディである。
「おかえりー晶、飲みに行ってたんだ?」
「おう、久しぶりに礼治と飲んでた。姉ちゃん、何気に礼治と結構話してたよな?3~4年前に家飲みした時とか、うろ覚えだけど」
礼治の名を聞き、香住は飲みかけていた水を口から僅かに溢した。
「れ、礼治君?あぁ、あれは私も飲んでて絡んじゃった感じだったかな?」
礼治と香住には晶に秘密にしている事があった。
礼治の初体験の風俗嬢は・・・実は香住なのだ。
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