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Lv.19 両手に花
「この一戸建てが、美亜ちゃんの別宅ってこと?」
香住は礼治のホラー克服計画の拠点である『白い家』を見て、ひきつった笑顔を浮かべた。
「そう、ここなら悲鳴をあげようが何をしようが御近所迷惑にもなりませんし、思う存分ホラーと向き合う事ができるんですよ」
ドヤ顔全開の美亜を尻目に、礼治は香住に問いかける。
「ちなみに、香住さんはホラー大丈夫なんですか?」
「ん~バイオパニックシリーズとかは、一通り見たけど本格的なヤツは好んで観ないかな」
「あぁ、ゲームからメディアミックスした作品ですよね?人間が食人植物になるんでしたっけ?」
「ちょっとー!二人だけで話しないで下さい!さぁ、まずは腹ごしらえしますよ!腹が減ってはホラーは観れません!」
逆に、腹が膨れている時にグロシーン見たら吐きそうな気がしないでも無いが・・・そう思いながら、食卓へ向かう。
「え、テーブルが大きくなってるし椅子が三つある?」
前回は二人で使う用だったのに・・・わざわざ、テーブルと椅子を変えたのか?
またもや、美亜がドヤ顔全開で答える。
「一応、我が別宅の初来客ですから丁重に持て成してあげようと思いまして」
「あら、御気遣いありがとう。それにしても、これは・・・おにぎり?」
香住は紅白の丸い握り飯のような料理を指差して聞いた。
「これは『珍珠丸子』という肉団子に餅米をまぶして蒸した点心だそうです」
「華が咲いたみたいで綺麗ね!こっちのスープは・・・まさか、フカヒレ?」
「うわ、初めて見た・・・」
「後は麻婆豆腐、中華春雨のサラダ、飲茶ですね。さぁ、食べましょう!」
豪華で美味しすぎる料理を食べ終え、風呂に入る流れとなる。
「では、先生からどうぞ!」
「礼治君、いってらっしゃい」
「では、お先に失礼します」
笑顔で礼治を見送る二人、礼治が部屋から出ると笑顔は消え、互いに目を細めて見つめ合う。
「お楽しみいただけてます?ここには、二度と来れないと思いますので、存分にくつろいで下さいね」
「あら、礼治君の許可があれば、また来れるんじゃない?それにしても、随分とお金にモノを言わせてるわね」
「この別宅は全て私自身が投資で得たお金で用意してますので、親のスネはかじってませんよ」
「と、投資って女子高生でもできるの!?」
「あら、ご存知無いんですか?年齢の下限は無いんですよ」
流石、世界的に有名な会社の社長令嬢・・・香住は、ごくりと唾を飲む。
暫くして、礼治が風呂から上がってきた。
「シルクのパジャマ?」
「何か、着ている感じがしないでちょっと違和感ありますね」
礼治のパジャマ姿に驚く香住に美亜が声をかける。
「香住さんにも、同じモノをご用意してます。色は薄いパープルで、サイズは一応、3種類ありますので御自由にお使い下さい」
「・・・お風呂って、大きいの?」
「はい、ゆったりくつろげますので、ご心配無く」
「じゃあ、一緒に入ろうよ美亜ちゃん。時間も勿体無いし」
予想外の誘いを受け、美亜はたじろぐ。
「た、確かに女性のお風呂は時間かかりますからね・・・良いですよ」
美亜もスタイルには自身があった。
が、服を脱いだ香住のナイスバディに圧倒される。
「なんですか!?着痩せするタイプ?その、胸、腰、お尻は!もはや、凶器ですよ!けしからん!」
「あら、美亜ちゃんも綺麗よ。肌のハリとか、流石に若いわねぇ」
マウントを取り合う女たち・・・そうとは知らず、礼治は風呂上がりにフルーツ牛乳を飲みながら思った。
「女の人は仲良くなるのが早いなぁ~」
そして、全くわかっていなかった。
そんなこんなで二人が風呂からあがって一息つき・・・いざ、今回のホラーアニメ『不死戯のアリス』をDVDプレーヤーにセットした。
「今回は、どんな内容なんですか?」
「スプラッター系のアニメみたいですが、通常版はグロシーンがカットされてるらしいので恐怖濃度は中くらいって話でしたよ」
「なるほど。そういえば、前回の『悪霊の臓物』にもアリスというキャラがいましたね」
「ホラーだと、定番の名前なのかも知れないですね!」
美亜から内容を聞いた礼治は、ソファーに座ろうとして気がついた。
え?デザインは変わってないけど、ソファーも二人掛けが三人掛けになってる!?
驚きながら、端に座ろうとするが香住に押され真ん中に移動させられた。
「礼治君は真ん中でしょ~?せっかく、両手に花なんだから」
「まぁ、真ん中が一番見易いですからね。先生、怖かったら私の手を握っても良いですよ」
「怖かったら、私に抱きついても良いからね。礼治君」
苦笑いを浮かべ、礼治はうつむいた。
左右から、凄い良い香りするなぁ~同じシャンプーとソープなのに、微妙に違う・・・こんなんで、集中して観れるだろうか?
こうして『不死戯のアリス』の鑑賞会がスタートした。
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