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⭐Lv.20 不死戯のアリス
メイド喫茶に訪れた俺は、とりあえず空いている席に座った。
すると、二人のメイドがメニューを手にしてやってきた。
「いらっしゃいませーご主人様」
「ショウ兄、来たんだ?」
愛想良く挨拶したのは、妹のウサミで愛想が悪いのが幼なじみのアリスだ。
ウサミは、ちょっとぽっちゃりした黒髪、黒縁の丸メガネにツインのお団子ヘアの我が妹ながら癒し系の可愛い娘。
アリスは、スレンダーな茶髪のロングボブで少しつり上がったパッチリ二重瞼に大きな瞳の美少女だ。
「俺はアリスが来てほしいって言ってると聞いて来たんだが?」
「私がぁ?ちょっと、ウサ!どういう事よ?」
「えへへ、そう言ったら兄さん来るかな~って」
妹の策略にハマり、まんまと来てしまった俺は溜め息混じりにメニューを受けとる。
「そういえば、兄さんはクリスマス予定あるの?」
「漫画の応募締め切りが迫ってるから引きこもるつもりだ」
「ほ~美少女二人を差し置いて漫画かぁ?」
「それ、自分で言うか?」
「ちょっと残念だけど、頑張ってね!それと、どうよ?」
アリスはクルっと回って見せた。
「ん?」
「兄さん、似合ってるかって聞いてるんだよぉ?」
我ながら、鈍い・・・俺は咳払いを一つして感想を述べた。
「似合ってるよ」
「なんか、心こもって無くない?まぁ、良いけど」
「本心で言ったんだが・・・二人はクリスマスどうするんだ?」
「バイトで仲良くなった女の子たちとクリスマスパーティーするんだよ!あ、安心して。女の子しかいないから」
「へぇ~ウサミはともかく、アリスも行くのか?」
「ウサがしつこくて、ウザいから今回は折れてやったわ」
二人は楽しいクリスマスを過ごせそうだな。
俺は数日後に『こんな事になる』なんて、夢にも思わなかった。
24~25日は、例年より雪が降り積もっていた。
「ごめんね、アリス・・・私が誘ったばっかりに・・・」
立ち入り禁止になっている廃ビルの屋上に立ち尽くす半裸のウサミ・・・それを止めようと、身体中にアザを作ったアリスが手を伸ばすも、届かなかった。
そのまま、二人はビルから転落した。
病院に駆けつけると、俺の両親とアリスの両親が立っていた。
「なぁ!どういう事だよ・・・二人が飛び降り自殺未遂したって!」
「こっちが聞きたいくらいだ!どうして、こんなことに・・・」
俺は父親を問い詰めるが、わかるわけが無い。
泣きじゃくる、俺とアリスの母親・・・アリスの父親が俺に声をかけた。
「今、警察が調べてくれている・・・調査結果を待つしかない」
アリスの父親が冷静を装っているのは、握った拳からも見てわかった。
数日経っても、二人の意識は戻らなかった。
ウサミとアリスの身体には、複数のアザがあり暴行を受けた可能性があると刑事が両親に伝えていたが・・・更に数日経っても捜査に進展が無い。
俺たちとアリスの家族は、これまでに無い暗く辛い年越しをした。
警察は宛にならない・・・こうなったら、自分で調べてやる!
二人が飛び降りたのは、26日の朝・・・24日はバイト仲間とクリスマスパーティーをしていたハズだ。
25日になっても、帰宅しなかった二人を心配して俺の両親もアリスの両親も何度も連絡したらしい。
だが、二人のスマホはいまだに見つかっていない。
25日の昼過ぎ、警察に捜索願いを出した。その後、ようやく俺は二人の行方がわからない事を知った。
クソ、漫画なんて書いてる場合じゃ無かったんだ・・・まずは、バイト先を訪ねてみよう。
メイド喫茶に入り、メニューを持ってきて女に声をかける。
「突然、申し訳ない。俺はここでバイトしていたトミナガ ウサミの兄です。クリスマスイブに妹とパーティーに参加した方を呼んでもらえませんか?」
女は目をパチクリさせた後、真顔で答えた。
「あ、それ、私達です」
「あなた方が?警察にも聞かれたと思いますが、パーティーに参加した二人の様子を聞かせて暮れませんか?」
「警察?いや、そういうのは無いですよ。私達はカラオケでコスプレパーティーして、22時には解散しました。二人は一緒に帰ったけど・・・その後はわかりませんね」
パーティーの後に、悪漢に拉致されて暴行されたのか?
「あの~なんか、注文してもらえます?店長が見てるんで」
女の目線を追うと、色黒の刈り上げドレッドヘアの筋肉質な中年がこちらを睨み付けている。
こんな、いかついヤツが店長なのか?
とりあえず、オムライスを頼む。
オムライスを持ってきた女がケチャップ片手に言う。
「ハート、書きます?」
「いや、結構です」
「そうですか」
そういって、振り向き様に女は二つ折りしたメモ紙をテーブルに置いて去っていった。
開いて見ると、電話番号と「もっと詳しく聞きたいなら、電話して下さい。協力します」と書かれていた。
俺は店が終わる時間まで、街で時間を潰して女に連絡をとった。
「あ、ウサちゃんのお兄さん?一緒にいた、他の二人も誘ったので聞きたい事があれば何でも聞いて下さい。パーティーをした、カラオケの304号室で待ってます」
無愛想な女だったが、協力してくれるのはありがたい。
指定された部屋を覗くと、女が三人いた。
手招きされ、ドアを開けた。
次の瞬間!突然、背後から誰かがハンカチで俺の口を覆った!
意識が遠退く・・・これは、クロロホルムってやつか?
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