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⭐Lv.8 骨の森
それは、俺にとって大きな誤算だった。
「え!?キャンプって今日からじゃないんですか?」
「参加希望者が多すぎて、二日に分ける事になったのよ。何か、問題でも?」
ツカサ先輩の一言で、俺は全身の血が引いていくのを感じた。
俺が想いを寄せているカノンちゃんは先発隊で、既にキャンプ場で一夜を過ごしているという事実に青ざめる。
カノンちゃんは、今年入ったサークルメンバーの中でダントツに可愛い・・・サラサラの黒髪ロングで髪型は後ろ結びのツインテール、大きな瞳、低い身長の割にはボリュームのある胸!
狙ってる輩なんか、山ほどいるだろうに・・・よりによって、先発隊にはヤリチンで有名なコスギ先輩もいる!
「ツカサ先輩、一刻も早くキャンプ場にいかなければ!」
「アサヒ君、何を焦ってるの!?バスも決まった時間に来るんだから落ち着いて!」
サークルメンバー十数人とバスに乗り込む・・・てか、ウチのサークルってこんなに人いたっけ?
「どうしたの、キョロキョロして・・・アサヒ君って、そんなに落ち着き無い子だっけ?」
ツカサ先輩のクールなつり上がり気味の瞳が、俺をじっと見つめる。
ツカサ先輩も、サークル内では男女共に人気がある背は俺よりは低いが女性メンバーの中では一番高く、ショートカットでしなやかなスタイルの美人なお姉さんだ。
俺はカノンちゃんみたいな娘がタイプなのだが、流石に見つめられると照れ臭い。
目を逸らして、キャンプが久しぶりだからワクドキしてるだけだと伝えた。
「へぇ~てっきり、私は意中の女性が先発隊だったと知ってキョドってるのかと思ってたわ」
この人、読心術使えるの?
図星を突かれ、誤魔化すように窓ガラスから外を眺めていると・・・なんだか眠くなってきた。
社内のBGM、微かな甘い香り・・・次に目を開けるとバスは停車していた。
窓越しの景色は、さっきまで見ていたハズの街とはうってかわって緑豊かな自然が広がっている。
荷物を下ろすと、バスはキャンプ場から走り去って行った。
それにしても、目はスッキリしているが身体が怠い。
どのくらい寝ていて、ここはどこなのだろう?
スマホの電波が無いくらいだから、かなり山奥なのは間違い無い。
「さぁ、先発隊と合流する前に私達のコテージに荷物運ぶわよ」
「へ?先発隊とコテージも違う場所なんですか!?」
「先発隊も後続隊も12人ずついるから、女4、男4、男4でコテージ使う事になってるわよ」
全部で24人も参加してるのか!?飲み会の時でも、20人いなかったような・・・もしや、カノンちゃんやツカサ先輩目当てに入ってきたヤツとかいるのでは?
荷物を置いた後は、先発隊と合流してキャンプ場でバーベキューする予定らしいので俺は急いで準備をした。
早く、カノンちゃんに会いたい!
いてもたってもいられなくなり、皆より先にキャンプ場に向かう。
しかし、キャンプ場には虫の音だけが響いており人の気配は無い。
「誰も居ない・・・ツカサ先輩から貰った地図だと、キャンプ場は一ヶ所だけだし、ここに間違い無いよな?」
炊事場らしい場所から、水が流れているような音がする。
誰かいるのか・・・ここからだと、人の姿は確認できない。
囲いで覆われた洒落た木造の炊事場を覗き込む。
「え?」
そこには調理台の上に寝そべったコスギ先輩の姿があった。
ただし、いつもと違う・・・胴体に風穴が空いたコスギ先輩の死体だ。
「ナニ、コレ、ドッキリ?」
吐き気を催しながら、後退りする俺は調理台の下から視線を感じ目を向ける。
赤黒い瞳のナニかが、こちらを覗き見ていた。
悲鳴を上げながら走り出す。
ナニかが追いかけてくる!
足音が近づいてくる!
道もわからないまま逃げ続けるも、途中で足を滑らせ林道から転落した俺は・・・ナニかに追い詰められた。
足を挫き、立つこともできない俺は尻餅をついたまま、ソレを見上げながら後退りする。
骨の鎧を着たような、骨と肉が入れ替わったような異形の姿。
特殊メイクをした人間・・・でなければ、正真正銘の化物だ。
必死に命乞いをしたが、骨の化物は一言も発すること無く槍のように尖った肘で俺の頭を貫いた。
game over
礼治は絶命シーンのあまりにもリアルな映像と迫力に腕をバタつかせたまま、ソファーごと後ろに倒れて頭を打った。
「先生!?」
「・・・失神してますね」
ホラー小説家、朝比奈 礼治はホラーVRゲームに完全敗北した。
「・・・ん」
意識を取り戻した礼治は、恐ろしい目にあったと思いながらも頭部の心地よい柔らかさに安心感を覚えた。
なんだか、程好い柔らかさの枕だな・・・それに、良い匂いがする。
それにしてもVRゲームと言うのは、あんなにもリアルなモノなのか!?
「先生、大丈夫ですか!?」
眼鏡を外しているので、視界がボヤける。
目を凝らすと、逆さになった美亜の顔が眼前に現れた。
「す、スメラギさん!?あ、ひ、膝枕!?」
慌てて身体をお越し、眼鏡をかけると心配そうな表情の美亜と冷めた目をした中嶋の姿が目に映る。
さっきまで先生と慕ってくれていた尊敬の眼差しは一転、中嶋の冷たい視線と言葉が礼治の胸に突き刺さる。
「ホラー小説家がホラーゲームで気絶するなんて、笑い話にもなりませんね」
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