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「嘘だろ、おい……!」
「つらいけど、これは現実なんだよ」
「いったい、どうして」
「海向こうの肥満国家・タイシボンに、プロテインの原料を奪われたんだ」
「牛乳と大豆を、あいつらが? なんのためだ?」
「ダイエットをしてるんだって。大豆シリアルにして食べるって言ってたよ」
「それでおいそれと渡したっていうのか? どうして抵抗しなかったんだ!」
「だ、だって……! あんな巨体に迫られたら、ノーとは言えないよ」
「ああ……そうだよな、すまない」
タンパクシッツ国民は小柄でヒョロヒョロでしたから、肉弾戦では、どうやったって勝ち目がないのです。
「でも、やつらは船で来るんだろ? 陸から大砲で撃っちまえよ」
「ムリだよぅ。あいつら、体だけじゃなくて船もボヨンボヨンなんだ。大砲なんて撃ったら、こっちに跳ね返ってきちゃう」
タンパクシッツ国民はため息をひとつ零して言いました。
「あいつら、働きたくないからって俺らに牛乳と大豆を作らせ続ける気なんだ。このままじゃあ、タンパクシッツはタイシボンの植民地にされちゃうよ」
「……よし、俺たちに任せろっ」
ボウディーヴィルス国民は、タンパクシッツ国民のために戦うことを決意しました。
プロテインサプリメントのこともありますが、マッチョは正義感が強いのです。
「今月中には話をつけてやる」
「ありがとう! さっすがムキムキ! 泣く子も黙る上腕二頭筋!」
「よせやい。照れるじゃねえか」
ボウディーヴィルス国民は、ニマニマしながらさりげなく力こぶを作って、上腕二頭筋をアピールしました。
「ふぅー! バリバリだね!」
「仕上がってるよー!」
「血管うねうねマスクメロン!」
「ノーベル筋肉賞!」
タンパクシッツ国民は、ここぞとばかりに筋肉を褒めまくります。
すると、ボウディーヴィルス国民は鼻息を荒くしてこう言いました。
「タンパクシッツ国民の危機に、今月中なんて悠長なことは言ってられねえ。明日中に話をつけてやる!」
「わー、ありがとう! 助かるよ」
タンパクシッツ国民はボウディーヴィルス国民の扱いが上手いのです。今までも、そうやって生き残ってきた国でした。外交上手な国です。
「広い背中は伊達じゃないね!」
「逸脱極まりない背中だ!」
「僧帽筋が並じゃないよ!」
体を褒めちぎられたボウディーヴィルス国民は、筋肉をムキムキさせながら、上機嫌で帰っていきました。
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