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「さあ…綺麗になりましたよ。」
眩しそうに双眸を細めて、夫を見上げる穂香。
正装に身を包んだ庸一郎は、惚れ惚れするほどの美男であった。龍を刺繍した浅黄色の羽織に、海老茶の袴が良く似合う。
切れ長の眼と高い鼻梁は、姫宮家特有のものだが…庸一郎のそれは、更に洗練されていた。生来の生真面目さが、そのまま表れたように、冴えた顔立ちをしている。
「うん、素敵。姫宮家の当主は、こうでなければね。」
そう言って、ひとり頷く穂花は、実に誇らしそうである。
彼女の白い額に掛かる解れ髪を、指先で愛しげに払い退けながら──庸一郎は、柔らかく破顔して言った。
「では、行こうか?」
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