第一話 水ノ記憶

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「さあ…綺麗になりましたよ。」  眩しそうに双眸を細めて、夫を見上げる穂香。 正装に身を包んだ庸一郎は、惚れ惚れするほどの美男であった。龍を刺繍した浅黄色の羽織に、海老茶の袴が良く似合う。  切れ長の眼と高い鼻梁は、姫宮家特有のものだが…庸一郎のそれは、更に洗練されていた。生来の生真面目さが、そのまま表れたように、冴えた顔立ちをしている。 「うん、素敵。姫宮家の当主は、こうでなければね。」  そう言って、ひとり頷く穂花は、実に誇らしそうである。 彼女の白い額に掛かる(ほつ)れ髪を、指先で愛しげに払い退けながら──庸一郎は、柔らかく破顔して言った。 「では、行こうか?」
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