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ねえ、ママ、どうしてぼくを置いていくの?
ねえ、行かないで。
ここは、どこ?
冷たくて暗くて目の前には鉄柵、まわりの子たちはひたすら泣き叫んでいる。
ここは、地獄?
ぼく、悪い子だから?
ごめんなさい、ママ。
悪い子でごめんなさい。
はやく、温かいおうちに帰りたい。
ここは、ご飯も美味しくない。
ここにいる猫たちは目に光がなくて、ただただご飯を食べるために起きてるみたいだ。
ここの人たちは、時折ぼくたちを外で遊ばせてくれたりするし、優しい人もたくさんいる。
けど、さみしくてさみしくてたまらない。
ママがいないと、ぼくは壊れてしまいそう。
また、ママにぼくの名前を呼んで撫でられたい。
ただ、それだけでいいから。
ここで過ごすのにも慣れた日の朝。
『…ごめんな』と謝りながら、ここの男の人がぼくを抱き上げた。
ああ、ついにこの日がきたんだ。
ほかの猫たちが恐れてやまない日が。
ぼくは、ほかの猫たちとともに毒ガスを浴びた。
ほかの猫たちは『やめて!ここから出して!』と阿鼻叫喚の地獄絵図だった。
ぼくは、ママに会えないならもうすべてどうでも良かった。
どうでも良いけど、やっぱり苦しい、息が、できない。
意識が、遠のいていく。
ああ、最期はママに看取られたかった、な。
『〇〇ちゃん』
薄れゆく意識の中で優しくて懐かしい声でやっとママがぼくの名前を呼んでくれた気がした。
ママ、最期に名前を呼んでくれてありがとう。
いい子になれなくて、ごめんなさい。
生まれ変わったら、またママのペットになりたいです。
また、ママに愛してもらいたいです。
それが、ぼくの願いです。
どうか、来世は叶いますように。
最期に、ママ大好きです。
さようなら、さようなら。
やがて意識は果て、残されたのは毒ガスにもがき苦しみ倒れた知らない猫たちだった。
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